どうもanjinです!
今日は管理会計テーマの『原価管理のABC』を解説します。名前はややこしいですが、前回解説した「間接費の配賦」をする上での一つの手法になります。
〈間接費の配賦については、下記参照下さい〉
【原価管理のABCとは】
ABCとは、Activity-Based Costingの略称で『活動基準原価計算』のことです。どの製品やサービスのために発生したのかがわかりにくい間接費を、それぞれの製品やサービスのコストとしてできるだけ正確に配賦することによって、生産や販売活動などのコストを正確に把握していこうという考え方です。製品の製造や商品の販売に消費された原価(費用)を計算する、原価計算の手法の1つになります。
もともとは製造業において、間接費を正確に製品に配賦する手法として考案されましたが、現在では非製造業はもとより、行政サービスを行う官公庁・自治体でも導入されています。ABCを適用することで、どの業務にどれだけのコストがかかっているか、それを明確に把握することができるため、業務改善に活かすことができます。
【ABCが出てきた背景】
もともとは製造業において、間接費を正確に製品に配賦し、管理する方法として、1980年代にハーバード・ビジネス・スクールのロバート・キャプラン教授により提唱されました。
製造業における、伝統的な原価計算・管理の方法では、原材料費や人件費などの製造に関わる直接費の計算、管理に重点が置かれ、間接費は労務費や作業時間などで、各製品に配賦され、計算されていました。
しかしそれでは、実態とはかけ離れた製品製造コストが算出されることがよくあり、また、多品種少量生産への対応などによる間接費の増加や原価の費目構成の変化などもあり、従来型の原価計算では、正確なコストの算出に対応しきれなくなってきました。
そこで、増え続ける間接費の配賦に関して、その製品にかかる活動を基準にして管理し、間接費の配賦計算を実態に合わせて正しく行う手法がABC=活動基準原価計算です。
活動(アクティビティ)とは、例えば製造であれば、設計や工程管理、検査、発注、納品等々、製品の製造にかかわる一連のことです。その間接費の配賦基準は『コスト・ドライバー』といいます。
コスト・ドライバーは、リソース・ドライバーとアクティビティ・ドライバーに分けられます。
リソース・ドライバーとは、消費した資源のコストを、活動ごとに配賦する基準のことで、アクティビティ・ドライバーとは、個々の製品が消費した活動を、各製品に配賦する基準のことです。
これらの基準を用いて、ABCを適用することにより、各活動にかかっているコスト、そしてその活動により生産される製品にどれだけのコストがかかっているかが明らかになり、それによって、全体コストを削減し、より効率的な資金の配分を図ることができるのです。
【ABCの計算例】
以下の製品XとYを例に計算方法を解説します。
- X・Yの間接費合計
- 100,000円
- Xの直接作業時間
- 200時間
- Yの直接作業時間
- 600時間
まず、従来の計算方法では、以下のように間接費を算出します。
- Xの間接費
- 100,000×200/800=25,000円
- Yの間接費
- 100,000×600/800=75,000円
一方、ABCの方法では工程を分けて考えます。
- 【製品X】
-
- 工程1:100時間
- 工程2:100時間
- 【製品Y】
-
- 工程1:200時間
- 工程2:400時間
工程1に合計60,000円、工程2に合計40,000円要した場合、各工程における製品Xの間接費は以下のとおりです。
- 工程1
- 60,000円×100/300=20,000円
- 工程2
- 40,000円×100/500=72,000円
- Xの間接費
- 28,000円
同様の方法で、製品Yの間接費は92,000円と算出されます。
【ABMについて】
【ABCのメリットとデメリット】
〈ABCのメリット〉
ABCを採用するメリットは、これまでブラックボックスになっていた「間接費」の存在を複数の活動によって明らかにして製品に配賦できることです。
基準がこれまでのようにもともと決められたものではなく、製品に合った形で明確になるために本来の原価が算出でき、製品価格も適正なものとすることが可能となります。
そしてABCを採用することで、例えばこれまで競合相手に価格面で勝てない理由が判明したり、今後の競争力強化を考えた際、どの活動にそのコストがかかりすぎているかがわかったりします。
間接費を「可視化」できるようになるというのがABCの最大のメリットです。
〈ABCのデメリット〉
デメリットは、コストプールとそれに対するコストドライバーを決定しなければならないという手間にあります。
コストドライバーはまず間接費総額からそれぞれの活動に対する配賦を決めていきますが、そのためにはそれぞれのコストプールを決定し、さらにそれらの1回当たりの費用を決めていく必要があります。
そしてABCの精度を高めるためにはある程度コストプールの数を細かくする必要があるため、ほぼ自動的に直接労務費などに配賦するこれまでの原価計算に比べると、相当な手間となります。
また、コストプールもより原価を正確に把握できるように選択する必要があり、例えば1回当たりの費用が大きくなるコストプールを重視する必要があります。
ABCを初めて採用する場合などは、このような点を意識しておかなければならないと言えるでしょう。
【まとめ】
原価管理について、伝統的方法やABCを解説してきましたが、どの方法にも長所と短所があり、すべての企業に当てはまる唯一の方法はありません。
いろいろな考え方の基礎を理解したうえで、バランス感覚を持って、自社に合った管理を行うことが大切です。
【参考書籍】
やさしくわかるABC/ABM (入門ビジュアル・アカウンティング)
以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうごさいました!
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