どうもanjinです!
今日は人事労務分野の『メンタルヘルス』について書いていきます。
現代、ネット社会となり便利になった反面、SNSでの誹謗中傷や人間関係トラブルなどにより、強いストレスを抱える人が増えています。
どんなに風邪をひかず病気にかかっていなかったとしても、精神的に疲弊していては、心身共に健康とは言えません。
この記事では、メンタルヘルスとは何か、おもな症状や原因を纏めていきます。
【メンタルヘルスとは】
精神面の健康を指すメンタルヘルスは、医学的には「心の病気」とも言われています。
世界保健機構(who)では、「精神的に満たされた状態」が健康の定義とされており、単にカラダが元気でも、心が疲れていては、心身共に健康とは言えないということなのです。
逆に、精神面が良好で心に不安やストレスを抱えていない状態であれば、イキイキとした意欲的な日々を過ごすことができます。これが、まさに心が健康である状態と言えるのです。
心の問題は非常にデリケートなため、誤った対処方法を取るとかえって心にダメージを与えてしまい、余計に悪化させてしまう恐れがあります。そうならないためにも、正しいケアの方法を学ばなければなりませんし、必要があれば専門医に見てもらうことが重要です。
【メンタル不調の症状】
メンタルヘルスは、『心の疾患』です。
メンタルヘルスが引き起こす「メンタル不調」により、カラダや行動にもさまざまな異変が現れます。 メンタル不調の症状は具体的にどんなのものがあるのか、下記症状別にまとめました。
不眠
1日の疲れをとるための睡眠、「夜になったら眠る」という自然な生活サイクルができなくなってしまうのもメンタル不調の代表的な症状です。
よく、大切な試験の前や結婚式の前など、緊張して眠れなかったという経験をしたことがある人もいるかと思います。それは、心に不安があることが原因です。
メンタル不調になると、常に心に不安や心配があり、何かしら思考してしまう状態のため、脳が興奮状態で眠れなくなってしまいます。
食欲がわかない
お腹は空くけれど、「食欲がわかない、食べたいと思わない」という食欲不振に陥ることも少なくありません。
緊張したり、悲しい出来事があったりして、食事が喉を通らなかったというのは誰にでもあることですから、そういった場合は心配いりません。
しかし、1日だけでなく数日間も食事をしたいと思わない、十分に食事ができていないという状態は危険です。
意欲がわかない
仕事や自分が好きだった趣味のことまで、何に対してもやる気が起きず、楽しいと思えなくなる場合もあります。
いままではストレス発散だったことでさえ、意欲がわかなくなり、次第に家から出ず人ともかかわらなくなるケースもあるのです。
疲れが取れない
日々、社会生活を送る中で疲れが溜まることは誰にでもあります。
しかし、メンタル不調により心が疲弊すると、意欲も食欲もわかなくなり、カラダが鉛のようにまったく動かなくなることもあるんです。
常に心配や不安を抱えている中、どんどん疲労が蓄積し、ずっと横になっていても疲れがとれず、倦怠感に覆われることも少なくありません。
これらのほか、不眠や疲労からくる頭痛、胃痛、肩こりなどの症状に悩まされる人も多くいます。
心に抱えた行き場のない不安感から、アルコールやたばこの用が増え、依存症に陥ってしまうケースもあるのです。
【メンタルヘルス不調の兆候】
業務上の兆候
出退勤の変化
パフォーマンスの低下
行動面の変化
心身面での兆候
心に現れる症状
体に現れる症状
【メンタルヘルス予防の3つの段階】
「3つの段階」とは、ストレスに対してどの段階で予防・対処するのかという考えに基づいた枠組みで、1次予防・2次予防・3次予防に分かれています。各段階の考え方を確認していきます。
1次予防【未然に防ぐ】
ストレスによってメンタルヘルスに不調をきたす前に予防する段階です。労働者が各自で行うストレス緩和ケアのほか、労働環境の改善もこの段階に含まれます。
主に、ストレスマネジメント研修やストレスチェック制度の導入などにより、労働者一人ひとりのメンタルヘルスに対する意識を高めていきます。
※ストレスチェック制度については、下記参照ください。
2次予防【早期発見】
2次予防では、メンタルヘルスに不調があらわれた労働者を早めに発見して適切な措置を行う段階です。
本人が不調に気づいたときに自発的に相談できる相談窓口の設置や、産業医との面談機会を設けることなどが主な施策です。メンタルヘルス専門の外部サービスとの連携も効果的です。同僚や管理監督者も異変にいち早く気づき、気兼ねなく相談できる職場風土を目指します。
3次予防【職場復帰支援】
メンタルヘルス不調によって休職した労働者の職場復帰をサポートする段階です。休職による不安や焦りを緩和させるための精神的なフォローや、復帰後に無理をさせないような仕事面のケアなどを行います。
3次予防をおろそかにすると再発や離職につながるため、慎重なフォローが求められます。
【メンタルヘルスケアの4種類】
自分では精神疾患の症状に気付いていなくても、表情や行動にメンタルヘルス不調のサインが表れているケースがあります。そのサインに気付けるのは、日常的に接点がある身近な人間だけ。多くの人が一日の大半を過ごす職場では、同僚や上司による気付きがとても大切です。
厚生労働省は職場におけるメンタルヘルスケアとして、「セルフケア」「ラインケア」「内部EAP」「外部EAP」という4つのケアを推奨しています。
- セルフケア
- ラインケア
- 内部EAP(職場内産業保険スタッフなどによるケア)
- 外部EAP(事業外資源によるケア)
①セルフケア
セルフケアは、『従業員自らが行うストレスへの気づきと対応のこと』で、メンタルヘルス対策の第一歩はここから始まります。自分でストレス反応をコントロールする方法を学び、職場でのストレス耐性を高める「セルフコントロール研修」という手法が効果的です。
「セルフコントロール研修」は、自分自身のストレスの現状を知り、上手にストレスと付き合うための「心理学的スキル」を学ぶためのものです。
人はストレス要因に遭遇したとき、プラスとマイナスの二通りの捉え方をします。
例えば、新しい仕事を担当することになった場合を考えてみましょう。新しい仕事を「脅威」と捉えるか、それとも「コントロール可能なもの」と捉えるかで、その後の状況は大きく違ってきます。「脅威」と捉えた場合、不安な気持ちに包まれ、自分ではどう対処していいのかが分からなくなり、ストレスがどんどん溜まっていきます。一方、「コントロール可能なもの」だと思えば、不安な気持ちになることは少ないでしょう。困難なこともポジティブに捉え、難しい仕事に対してやりがいを感じ、積極的に対処していくようになります。
このように、ストレスに遭遇した際にどういう捉え方をし、どんな対処方法を取るのかは分岐点といえます。
また、自分自身でストレスに対処していくセルフケアを行う場合、下記に示したような行動やスキルを習得することが効果的です。
【リラクゼーションスキル】
リラクゼーションとは、ストレスを受けて発生した感情や生理反応をできるだけ軽減していくこと。リラクゼーションすることによって体の反応を変えれば、感情も変えることができます。「筋弛緩法」「呼吸法」「自律訓練法」などの手法(スキル)を学ぶことによって、ストレス感情の減少のほか、肩こりなどの筋肉の緊張を減少させることができるようになります。
【マインドフルネス(瞑想)】
マインドフルネスとは、雑念を持たず、いま起こっていることに集中する心のあり方のこと。緊張感から解放され、最も自分の力を発揮できる状態です。このようなマインドフルネスの状態となるために用いられる方法が「瞑想」です。静かな場所で目を閉じて瞑想し、雑念や無駄な思考のないところに自分の心を持って行くことにより、ストレスが解消され、精神的にも肉体的にも緊張が緩和されていきます。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズが、瞑想を習慣にしていたことはよく知られています。
【対人関係スキル】
会社組織において、対人関係を良好に保つことは大変重要です。適切なコミュニケーションが求められる中、相手に自分の意見や考えをうまく伝えることができれば、自信へとつながっていくでしょう。
「アサーション」(自分の考え・意見として、言うべきことは言う)と呼ばれる対人関係スキルを習得すれば、職場における人関関係を円滑に進めることができるようになります。
アサーションを行う際のポイントは、「私は~」という主語(アイメッセージ)を使い、自分の気持ちを伝えること。自分が主語となるので自覚的となり、考えていることを率直に表現することができます。また、初めから「無理です」「できません」といった否定的な言葉は使わず、相手に状況を説明し、相談していく中で「こうしたら可能です」など、譲歩案を提示していくようにします。その際、相手とは常に対等であることを意識し、自分が上司である場合には、普段から命令口調を改めるようにします。
②ラインケア
ラインケアは、『管理者が行う職場環境などの改善と相談への対応のこと』です。
言うまでもなく、管理者にとって部下のマネジメントは重要な仕事です。メンタルヘルス対策の場合、部下の健康状態とともに労働時間や仕事の量・質をチェック。部下がストレスを溜めていないか、またそのストレスに対処しているかどうかを見極め、心身ともに健康で仕事に取り組めるよう管理・指導し、部下の心身の健康に配慮することが求められます。
そのためには、不満や抱えているストレス、仕事に対する意欲や気力などについて、部下からしっかりと話を聴く時間を確保する必要があります。心の問題の予兆に気づいて相談に乗ったり、必要に応じてアドバイスを行ったりするなど、早い段階から問題に気づいて対処できるよう、心掛けなくてはなりません。
③内部EAP(職場内産業保険スタッフなどによるケア)
「EAP」(従業員支援プログラム)は「Employee Assistance Program」の略称で、メンタルヘルス対策として相談室を設けたり、カウンセラーを配置したりするなどして、従業員を支援するプログラムのこと。
職場のストレスや、上司や部下との人間関係、セクハラ・パワハラ、キャリアに関する問題、プライベートな悩みなど、働く人の仕事の生産性に影響を与える原因と客観的に向き合い、解決の糸口を探して、健康な状態で安定して働くことができるようにサポートします。
EAPは、内部で行う場合と外部で行う場合があります。健全な職場環境を保持するには、職場内に専門スタッフがいることが望ましいでしょう。内部EAPは、自社内の産業保健スタッフなどが職場環境やストレスの状況について評価し、管理者と協力して改善をしていくことを目的としています。そのため、現場との密接な連携が必要です。
④外部EAP(事業外資源によるケア)
社内に専門スタッフを雇用することが難しく、「外部EAP」を利用する企業が増えています。その背景には、大きく分けて二つの理由があります。一つ目は、コストが安いこと。二つ目は、内部EAPと比べて利用率が高いこと。
することができます。その結果、疾患に至る前の早期対応も可外部EAPはプライバシーが厳格に守られているので、従業員は安心して利用能となります。主な社外の専門機関には、公的機関である地域産業保健センター、産業保健総合支援センター、中央労働災害防止協会のほか、民間の専門医療機関やEPA(従業員支援プログラム)などがあります。
【メンタルヘルスケアのために企業が行うべきこと】
国が行う制度以外にも、メンタルヘルスケアのために企業が行うべき取組みはさまざまです。具体的な取り組みや支援を下記で紹介します。
・人間関係を改善しコミュニケーションを円滑にする
人間関係は、ストレスの原因の最たるものです。人間関係に問題がある職場では、ストレスを感じて精神状態が悪化する人が増える傾向があります。
メンタルヘルスケアのためには、職場の人間関係をより良いものにしなくてはなりません。
そのためには、職場の仲間同士の円滑なコミュニケーションが第一です。上司と部下、先輩と後輩という垣根を超え、ポジティブな言葉で相手に気持ちを伝えられる環境を作りましょう。
立場に関係なく、職場の同僚を信頼し、相手の事を思いやる気持ちが大切です。また、職場のコミュニケーションを改善するためには、管理職から率先して動くことが効果的です。
企業として研修を行い、コミュニケーションやメンタルヘルスケアへの意識を高める体制を整えましょう。
※下記のような『伝え方コミュニケーション』の検定もあるので、参考にしてください。
苦手な上司・部下の理由と解決策がわかる!伝え方コミュニケーション検定
・相談窓口の設置や健康相談
ちょっとした心身の不調も気軽に相談できるように、産業医やカウンセラーなどが相談に乗る制度を作ることが大切です。
相談窓口の設置や健康相談などが役立ちます。ストレスのセルフケアのきっかけにもなるため、精神状態の悪化を未然に防ぐ効果もあります。
また、休職や復職など、メンタルヘルスの状態が悪くなった場合の相談対応は非常に重要です。メンタルヘルスの予防、不調の早期発見といった1次予防、2次予防に取り組みましょう。
また、実際にメンタルの不調で休職せざるを得ない場合は、3次予防として職場復帰の支援を行うようにしましょう。
・長時間労働をさせない取組み
過酷な労働や長期間勤務が常態化している企業では、メンタル不調者が出やすい傾向が強いです。労働条件や職場環境を改善し、長時間労働や過酷な労働を整えることは企業の責務です。
業種によってはなかなか難しい場合もありますが、その場合も健康指導や面談などを通じて、従業員の不調のサインに気付く環境作りが大切です。
・物事をポジティブにとらえる価値観の浸透を推進
人間は、同じ出来事が起きても、それをポジティブにとらえるかネガティブにとらえるかによって、受けるストレスが大きく変わります。
健全なメンタルを保つためには、何事にもポジティブに物事をとらえることが大切です。仕事に対してやりがいや熱意を感じ、前向きに取り組む気持ちを育むことで、心身の健康にも役立ちます。
このようなポジティブに考えられる価値観の形成のため、そのようなことができる従業員をとりあげて行動についてインタビューした内容を紹介するなど、企業として支援していきましょう。
・企業のトップがメンタルヘルスケアに取り組む姿勢
メンタルヘルスケア対策は、社内の一部の人間だけが行っていてもなかなか浸透しません。メンタルヘルスの重要性を広めるには、企業のトップが積極的にメンタルヘルスケアを重視する姿勢を見せるのが何よりも効果的です。
上層部から率先してメンタルヘルスケアに取り組むことで、末端の社員もメンタルヘルスケアへの考えが深まります。他人任せにせず、自らメンタルヘルスケア対策に力を入れる姿勢が重要です。
【まとめ】
「メンタルヘルス」が悪化することで、一緒に働く従業員の健康だけでなく、職場の生産性や離職率にも影響を及ぼしてしまいます。
対策を講じるうえで、同僚同士、またはマネジメント層だけがケアにあたっても、職場への効果は薄い。テレワークの普及によって、新たなストレスに晒される従業員が現状増えています。
この機会に、従業員全員で就労環境の改善を図れているか、職場内で確認し合ってみてほしいと思います。
【参考書籍】
元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術
以上が本日のテーマになります。ご覧いただき、誠にありがとうございました。
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