【管理会計】ビジネス教育 〈間接費の配賦〉

会計(財務会計/管理会計)

どうもanjinです!

今日は管理会計分野の『間接費の配賦』について書きます。管理会計で「原価計算基準」の後に学習するのが、製造間接費の配賦についてです。工業簿記でも出てくるメジャーな論点になりますが、今回は配賦に絞って解説します

【配賦とは】

配賦とは『店舗や部門に対して、共通経費をある一定の基準によって振り分けること』です。例えば、工場内でさまざまな部門がある会社であれば、工場全体で購入した機器の経費を部門ごとに分ける必要があります。そのときに配賦を決めておき、部門ごとの経費を明確にします

会社の規模が大きくなってきて店舗や部門が増えたタイミングで、経費のルールを決める配賦を導入することが多いです。

配賦の目的は、費用を平等に分担することです。例えば同じフロアにA営業部とB営業部がある会社で、同じコピー機を利用しているとします。コピー機の購入費用をA営業部がすべて負担するとなれば、不平等な状況が起こってしまいます。そうした事態を防ぐために、あらかじめ配賦を決めて経費での平等性を保つ必要があります。

配賦の決め方は、状況によって異なります。先ほどのコピー機の例であれば、平等に配賦する方法や、それぞれの営業部の人数比率に応じて配賦する方法があります。いずれにせよ費用を平等に分担することを目的として、配賦基準を設定する必要があります。

 

【製造間接費について】

製造間接費はさまざまな製品についてまたがって発生しているため、特定の製品にいくらかかったのかを直接集計できない原価要素です。

間接材料費・間接労務費・間接経費は全て製造間接費に振り替えられます。そして、何らかの基準を使って各製品に割り当てられます。このようにして割り当てることを配賦といいます。

どの製品にどれくらい製造間接費を割り当てるのかを表す『配賦率』を求めて、それに従い『配賦額』を求めて配賦していきます。この配賦を合理的に行うのが原価計算を行う上では非常に重要になってきます。

 

【製造原価の分類】

「間接費て何だっけ」という人のために、再度ここで、製造原価から説明します。

まず、製造原価は、「材料費」・「労務費」・「経費」という3つの項目に分類されます。これらの項目に分けて計算することで、製造原価を下げるためにはどこに注力して改善すべきかが分かります。

『材料費』は、その製品を作る際に必要となる部品、ネジ、潤滑油などを指します

『労務費』は、その製品の製造に関わる従業員へ支払う賃金などを指します。賞与や福利厚生にかかる費用なども労務費に含まれます

『経費』は、材料費や労務費に分類されない原価がまとめて含まれます。例えば、工場や倉庫の賃貸料、設備の減価償却費、棚卸減耗費、電気代などが経費に該当します。

製造原価の別の分類方法として、製品に直接関わる費用と間接的に関わる費用を分ける方法があります。それぞれ「製造直接費」「製造間接費」と呼び、材料費・労務費・経費の分類と掛け合わせて6種類に分けられます。

製造直接費

製造直接費とは、その名の通り直接製品に関わっているコストを指し、製品を製造すればするほど発生する費用です。

直接材料費

製造工場で作られる製品に対して、直接使われる材料費用のことです。具体的には、家具を製造する場合に使用する木材やプラスチック、自転車を製造する場合に使用するアルミやスチールなどが主要な材料費となります。

材料をつなぎとめる金具やネジ、外部から購入する買入部品費なども直接材料費に該当します。加工方法によっては材料が多く余ってしまったり、製造フローによっては歩留まりが多く発生したりすることがあるため、そのような場合には直接材料費の削減が製造原価の改善につながります。

直接労務費

製造工場において、製品の加工・組立など直接的な実務作業を行う従業者に支払われる給与のことです。

製造フローの効率が十分でないと、稼働しているはずなのに手が空いてしまったり残業が発生してしまったりなど、部門や作業場所によって負荷にバラつきが生まれて直接労務費が増大します。

直接経費

直接製品に関わった費用のことです。外注加工費や製品を作る上での金型などが直接経費にあたります。社内の製造フローに非効率な部分があれば、外注を利用することで全体的な製造原価を下げられる可能性があります。

 

製造間接費

製造間接費とは、工場で生産されている製品と直接結びつかない費用のことで、製造直接費用とは違い把握しにくい部分があります。そのため、製造直接費と比較すると、可視化しづらく原価計算が複雑になる特性があります。

間接材料費

どの製品に、どれだけ使ったか分からない材料のことを指し、具体的には潤滑油や塗料など明確な個数で表せられない材料などが該当します。また、間接材料費は3つに分類することができ、機材を動かすために使用する燃料や複数の製品に使用される塗料、包装材などが補助材料費、潤滑油などが工場消耗品、1年以内に取り替える工具や器具が消耗工具備品費に分類されます。

なお、どの材料が直接材料費に含まれてどの材料が間接材料費に含まれるかは明確に定められてはおらず、製品の仕様や企業の方針によって変わります。例えば、製品をパッキングするビニール袋は、他の製品にも使用されることを考慮すると間接材料費ですが、パッキングまで含めてひとつの製品とするなら直接材料費として考えることができます。

間接労務費

製造業では、加工・組立作業などの実務をする従業者以外に、生産管理・生産技術など製品に直接関わっていない従業者に発生する給与が該当します。工場で製品を製造している時に、材料が無くなり作業が一時停止している時間も、作業員には給与が発生します。

また、待機時間に発生する給与も間接労務費に含まれるため、作業内容によって費用が分類されることもあります。

間接経費

製品を作る時に使用される電力や工場設備の減価償却費や修繕費、製品に直接関わらず、特定の製品との関わりを明確にすることが難しい経費を指します。

間接経費はおおよその割合で計上する配賦計算を行うため、製品ごとにどれくらいかかったか、具体的にどうすれば削減できるかを管理するのが困難だとされています。削減を目指すには、デジタル化を進める、設備投資を行ってランニングコストを削減する、人材育成に力を入れて自主的に改善が行える現場を作るなどの方法があります。



【間接費の配賦方法】

間接費の配賦は、配賦する方法が大切です

企業によって間接費を配賦する方法はいろいろですが、自社の配賦する基準を決めることが大切です。配賦する基準は、費目ごとに設けるか、部門ごとに設けるかなども、一緒に決めておく必要があります。

配賦する基準を決めるときは、どの程度まで詳しくすると良いかわからないため、悩むときが多くあるでしょう。原価計算の精度をアップするためには、配賦する基準を正確に決めることが必要になります。しかし、基本的に配賦は合理的に費用を配分するものです。

細かい基準を設けると、複雑な計算になり過ぎて効率が悪くなる恐れがあります。配賦する基準として一般的に多く採用されているのは、製品別配賦部門別配賦です。自社に適した配賦する基準をまず決めて、トラブルにならないようにしっかりと基準を徹底することが大切です。部門別配賦は、間接部門と直接部門に費用を分けて、直接部門に間接部門の費用を配賦するものです。製品別に、部門別配賦で計算した費用を配賦するようになります。

 

【配賦基準の種類】

配賦基準の決め方はさまざまな方法がありますが、ここでは企業で採用されることが多い「部門別配賦」と「製品別配賦」を説明します。

どの方法が向いているかは企業によって異なるので、自社に合った配賦基準を設定しましょう。

部門別配賦

部門別配賦とは、費用を間接部門と直接部門に分けて、間接部門で生じた費用を配賦基準に応じて直接部門に配賦します。部門別配賦はさらに以下の3つの種類に分けられます。

・直接配賦法
・階梯式配賦法
・相互配賦法

直接配賦法は間接部門の費用を、直接部門にのみ配賦する方法です。配賦方法がわかりやすく、シンプルな配賦方法をのぞむ企業におすすめです。

階梯式配賦法はそれぞれの部門に優先順位をつけ、順位が高いものから配賦していく方法です。経費の優先順位がわかりやすい場合におすすめの配賦基準です。

相互配賦法は間接部門の費用を配賦したあと、製造を担当した部署にのみ二次配賦する方法です。製造部門が明確に分かれている会社におすすめの配賦基準です。

製品別配賦

製品別配賦は製品の製造工程で生じる費用のなかで、直接製品に配分できない費用を人数や工数などの基準に応じて製品ごとに配賦する方法です。具体的にはまず配賦率を求め、その配賦率を製品ごとの機械作業時間に乗じて算出します。製品を基準に配賦していくので、製品をベースに管理している会社におすすめです。

 

【配賦による影響】

〈プラス面〉

配賦する前は利益が出ていた店舗が、共通経費などを配賦されたために利益が出なくなることはよくあります。それぞれの店舗は、企業の全体の収益について考える必要があります。上手く配賦を利用すると、それぞれの店舗や部門に企業が生き残るためにクリアすべき最低限のハードルを提示し、利益をより高い観点で出そうという意識を育てることができます

〈マイナス面〉

どうしても配賦する基準が意図的になりがちで、振り分けを全ての店舗や部門が納得できるようにするのが困難であるということもあります。また、配賦する基準によっては、現場の意欲が下がるというリスクもあります。

配賦する基準を人数にしたときは、配賦を少なくするために人員を削減することもあり、作業効率が最終的に悪くなったり、負担が別の店舗や部門に行ったりするときもあります。
配賦する公平な基準がないときは、配賦をあえてしないということも方法の一つです。

 

【まとめ】

配賦の目的は費用を平等に分配することです。そのためにはどんな配賦基準がいいのかを考え、採用していく必要があります。これから配賦の導入を考えている会社の方は、会社全体を見渡して配賦基準を決めることが大切です。

 

 

【参考書籍】


プロ直伝! 必ずわかる原価計算のしくみと実務

 

以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうごさいました!

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