【ビジネス】コンピテンシー評価とは ハイパフォーマーの行動特性(能力による評価制度)

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どうもanjinです!

今日のテーマは人事分野の『コンピテンシー』を書きます。名前は聞いたことあるけど、具体的に何か分からない人もいると思いますので、基礎部分から解説していきます。

 

【コンピテンシーとは】

 

 

コンピテンシーとは「高い業績・成果につながる行動特性」のことです

例えば、ある特定の業務において、高い業績や成果を出している人がいるとします。その場合、その高い業績や成果を出している人には、何か業績や成果を出す理由があるわけです。

そして、その理由に当たる部分が、行動特性でありコンピテンシーなのです。

行動特性は大別すると「能力」と「行動」に分けることができます。しかし日本では、コンピテンシーを「能力」という一点で捉える傾向にあります

これまで多くの日本企業では「能力=職務遂行能力(職能)」と捉えてきました。しかし、前述したように、その職能を発揮し成果につながってる場合には理由があるはずなのです。

コンピテンシーとは何も「能力」だけを指すものではありません。能力というのは行動の形となって表れるものであり、潜在的にずっと影に潜んでいるものでは意味がありません

そのため、行動の特性に着目します。行動特性とは「思考」と「行動」が一体となって表れる特性のことです。

人事評価における評価基準には、表面化した「成果そのもの」を評価する項目が数多くあります。しかし、その成果を生み出している背景、つまり行動特性は見落とされる傾向にあるのです。

ある特定の仕事に対して、『成果につながっている行動特性を見出し、その行動特性を社内における評価基準に活かすことで、社内全体の業績や成果を高めていこうとするのがコンピテンシーなのです。

 

【コンピテンシーが生み出された背景と歴史】

 

 

コンピテンシーはもともと、1950年代に心理学用語として誕生しました。ハーバード大学のマクレランド教授が1970年代前半に行った調査をきっかけに、人事用語として知られるようになります。マクレランド教授は米国国務省の依頼を受け、外交官の「採用時のテスト成績」と「配属後の実績」の相関関係を調査しました。

その結果、「学歴や知能は、業績の高さとさほど相関はない」「高い業績を上げる者には、いくつか共通の行動特性がある」ことが判明しました。その後、コンピテンシーは、「高い成果を上げる従業員に共通する行動特性」を意味する言葉として使われるようになります。「コンピテンシー項目の体系化」や「コンピテンシーに関する本の出版」などにより、コンピテンシーの認知度はさらに高まりました。

日本では、バブル崩壊により、「年功序列」から「成果主義」へと徐々に人事評価制度が変わりつつあります。その評価基準の一つとしてコンピテンシーが導入され始めましたまた近年、少子高齢化による労働人口の減少が社会問題となっています。この課題を解決するためには従業員全体の行動の質を高め、生産性向上を図る必要がありますが、その手段の一つとして、コンピテンシーが再注目されるようになりました

 

 

【コンピテンシーが注目される理由】

 

 

コンピテンシーが注目されるのには、下記2つの理由があります。

 

1つ目は、企業が成果主義へと移行したことです。成果主義の導入により、個人の業績や成果を判断する基準に加えて、能力を客観的に評価する基準が必要になってきました。そこで、能力を評価する基準としてコンピテンシーを使った人事評価制度へと見直す企業が増えていきました
2つ目は、企業としての生産性を向上させるためです。競争が激化する社会の中で生き残るには、組織や企業全体の生産性を高めていく必要があり、社員一人一人の能力向上が欠かせません。そのためには、コンピテンシーを分かりやすくまとめ、見本となるような指針を作り、社員へと浸透させていくことが有効となります

 

このように、コンピテンシーは企業の問題を解決する糸口として力を発揮します。なお、コンピテンシーと似た経営用語に「コアコンピタンス」があります。コアコンピタンスは「自社の強み」を示す言葉です。また、他社や顧客から見た企業全体の能力を示し、客観的な評価の基準として用いられます。

 

【コンピテンシーモデルの設計】

 

 

コンピテンシーは概念なので、人材育成人事評価採用活動に活用するには、具体的な「コンピテンシーモデル」を設計することが必要です。コンピテンシーモデルには以下のように3つのパターンがあります。

 

  1. 理想型モデル :企業が求める人物像に基づいて設計
  2. 実在型モデル :実在するハイパフォーマーに基づいて設計
  3. ハイブリッド型モデル :理想型と実在型の融合

 

理想型モデル:企業が求める人物像に基づいて設計

まず「理想型モデル」についてですが、企業がホームページの「求める人材像」で掲げているような、理想の人物像を基に設計するものを指します。実在の人物がいるわけではありませんが、その企業にとって適した人物像を作り上げて設定します。このときに注意しなければいけないのが、あまりにも高い目標を掲げすぎず、現実的に達成可能な理想型モデルを設定することです

実在型モデル:実在するハイパフォーマーに基づいて設計

次に「実在型モデル型」ですが、これは企業に実際にいるハイパフォーマーに基づいて設計されます。社内でも一目置かれているような存在なので、「あの人がこんなにも成果を出しているのだから、もっと工夫して仕事ができるのではないか」というように、成果を上げる姿がイメージしやすいため、社員の納得感を得やすいでしょう。

ハイブリッド型モデル:理想型と実在型の融合

最後に、「ハイブリッド型モデル」ですが、これは理想型モデルと実在型モデルの融合になります。設計方法としては、実在型モデルでコンピテンシーを一度設計して、それにプラスアルファとして企業の理想像(理想型モデル)を足す形になります。その際は、あまりにも経営ビジョンとかけ離れたものにならないようにするために、経営者によるチェックを行います

設計する上での注意

人はつい、目に見えやすいものに注目しがちですが、高い業績を上げる行動には個人の価値観や経験といった見えづらいものも大きく関係しています。このため、コンピテンシーモデルを設計する際は、目に見えないものに注目する必要があります

そのためには、ハイパフォーマーである社員に「なぜ、そのように行動したのか」という質問を投げかけ、その行動をとった背景に目を向け、コンピテンシーを明確にし、コンピテンシーモデルを設計していく必要があります。そのあとに、「理想的なコンピテンシーモデルを設計したものの、自社が目指すところはかけ離れていた」ということがないように、経営ビジョンに照らし合わせてのチェックを必ず行いましょう

 


【コンピテンシー評価について】

 

 

コンピテンシー評価は、被評価者の年齢や勤続年数、あるいは保有する資格などで評価する「職能資格型評価」や仕事の結果に重点をおいた「成果主義型評価」とは違い、そのプロセスに着目する評価方法です。

従来型の評価と違い成果につながる行動特性に焦点を当てることによって、結果的には従来型の評価の良い面を輝かせることが可能になります。なぜならコンピテンシーへの着目は、結果的に成果につながると同時に人材の能力向上へとつながっていくからです。

そのためコンピテンシーに基づいた人材育成や人事評価は、より成果に結びつきやすいものであり、個人にも組織にも利益のあるものとなるのです。

 

コンピテンシー評価のメリットとデメリット

 

 

《コンピテンシー評価のメリット》

コンピテンシーを評価に取り入れることで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。下記メリットを3つ紹介します。

公平な人事評価の実現

従来の上司に依存した人事制度には、評価が属人化しやすいといったデメリットがありました。

直接の上司は部下である社員の働きを最も近くで見ているとはいえ、評価には思い込みや感情といった主観がどうしても含まれてしまいます。

コンピテンシー評価では、コンピテンシーという明確な評価基準があるため、評価が属人化することを防ぎ、公平な結果を生み出すことができます

社員も、評価に対して「何が評価されたのか」「より高い評価を得るにはどんな能力が足りないのか」といった点を把握できるため、納得して結果を受け入れることができます。

経営ビジョンの共有

コンピテンシーを明確にして社員に周知することで、企業がどんな人材を求めているのか、社員にどんなことを期待しているのか、社員の理解を深めることができます。

人事評価を行うには、まず各社員が上司と面談を行いながらコンピテンシーを基とした目標を立てます。

コンピテンシーを通して、企業が社員にどんなことを達成してほしいのか伝えることができ、全社員が経営ビジョンに紐づいた目標に従って行動できるようになります

求める人材の育成

コンピテンシーによる評価を行うと、各社員の能力や経験を正確に把握しやすくなります。

コンピテンシーとの比較によって、社内の人材にはどういった能力が足りていないのか、現在の人材配置は適正なのかが明確になるためです。

社員の能力値が明確になると、より効果的な人事戦略の立案にもつながります

また、社員は成果をあげるためにどのような取り組みが必要なのか明らかになるため、コンピテンシーに従って能力向上に励めるようになります。

コンピテンシー評価のデメリット

メリットの一方で、コンピテンシー評価にはデメリットも存在します。人事担当者が把握しておくべきデメリットを下記2つ解説します。

コンピテンシーの抽出が困難

コンピテンシーを取り入れるには、前述の通り高い成果を出している人の行動や思考を分析する必要がありますが、それがどういった特徴を示すかは、企業や職種によって多種多様です。

そのため、テンプレートというものが存在せず、ノウハウのない会社が一からコンピテンシーを確立することは至難の技です。

また、特定の分野や職業で成果を出している人の中には、アウトプットが苦手な人も多くいます。

行動の理由や思考パターンをうまく言語化できず、サンプルを取得することが困難な場合があります

変化に適応力が低い

IT技術の進歩やグローバル化で変化が目まぐるしい昨今のビジネスシーンにおいては、企業に求められる技能や知識も常に変化していきます。

前述の通り、抽出に非常に手間のかかるコンピテンシーは、改定するのも容易ではありません。

人事評価は経営戦略に合わせて常に改定を繰り返していく必要がありますが、コンピテンシーは早い改定サイクルの中では安定性を失ってしまうと指摘されています

 

【まとめ】

 

 

近年、人事用語として定着してきた「コンピテンシー」について解説しました。コンピテンシーとは、「成果を上げている人(ハイパフォーマー)に共通する行動特性」です。

コンピテンシー評価やコンピテンシー採用などに活用することで、社内人事を見える化することができます。さらにコンピテンシーを応用し適性にあった人員配置やハイパフォーマーの特性を社内共有することで、自社の成長を促すことが期待できます。

コンピテンシーは定期的に見直しを行い、自社で検討を重ねることでさらに強い人事を目指す手助けとなります。形式にとらわれすぎず自社に合った方法で採用や人事に活用してもらいたいです。

 

【参考書籍】

 


まんがでわかるコンピテンシー面接

 

 


コンピテンシー評価モデル集 改訂増補第5版: 各社事例にみる評価と活用

 

 

本日のテーマは以上になります。ご覧いただきまして、誠にありがとうございました!

 

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