【ビジネス】ダイバーシティ経営とは一体何なのか(多様性による経営戦略)

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どうもanjinです!

今日は人事関連分野の『ダイバーシティ経営』について書いていきます。現在、よくダイバーシティという言葉をニュースでも聞きますが、どういう意味なのか、どういったメリットやデメリットがあるのか等、説明していきます。

【ダイバーシティ経営とは】

 

 

ダイバーシティ経営の「ダイバーシティ」とは、そもそも何なのか。『言葉は聞くが、実のところいまいち中身がわからない。』そんな方も、おられるのではないでしょうか?

ダイバーシティは、和訳すると「多様性」となります。ダイバーシティ経営とは、『人種的な多様性、社会的な多様性、労働者の多様性、そういったものを企業の在り方に適応させた経営のこと』です。

ダイバーシティ経営は、その特性上外資系企業に多いですが、日本の企業でも浸透しつつあります。

ダイバーシティ経営の在り方を検討した経済産業省では2018年3月に「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を策定しました。ダイバーシティとは多様性を意味する言葉ですが、このガイドラインではダイバーシティ経営とは「多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指し、全社的かつ継続的に進めて行く経営上の取組と定義しています。

すなわち、『年齢や性別、国籍、学歴、職歴、宗教など属性が異なる多様な人材を活かした経営戦略』がダイバーシティ経営です。日本では最近まで男性を中心とした終身雇用・年功序列型人事をベースとした企業経営が行われてきましたが、このような画一的な発想では、今日の企業を取り巻く経営環境を乗り切れないという危機意識が強まり、日本でもダイバーシティ経営が目指されるようになりました。

【ダイバーシティ経営が出てきた背景】

 

 

ダイバーシティの概念が出てきたのは、もとは1964年、アメリカの公民権法成立に始まります。当初は人種差別に関する訴訟を避けるために使われましたが、1980年代には人種の違いや文化の違いに価値があるといわれるようになりました。

さらに1987年、アメリカの労働力人口構成予測「Workforce 2000」というレポートが発表され、今後労働人口は女性や高齢者、移民の比率が上がり、産業は製造業からサービス業へ転換していくと予測されました。この変化への対応策として必要となったのがダイバーシティ経営です。

ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が生まれ、多様な人材・能力を積極的に生かすことが企業戦略に欠かせないという考えが浸透しました。

21世紀になると、グローバル化やIT産業の発展が急速に進み、また国際的なM&Aが増え、ダイバーシティ経営はますます不可欠な状況となりました。つまりダイバーシティ経営とは、今やリスクマネジメントやCSRといった優良企業の物差しではなく、競争に打ち勝つための経営戦略という位置づけになっているのです。

少子高齢化が進む日本では、なおさらその必要性は迫っているにもかかわらず、危機感を持つ人が少ないという専門家の指摘も少なくありません。経済産業省では、上記でも説明した通り、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値 創造につなげている経営」と定義し、推進しています。

具体的には、ダイバーシティ経営で成果を出す企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」に選定・表彰しています。

 

【ダイバーシティ経営が必要される理由】

 

 

ダイバーシティ経営が必要とされる理由は、主に下記4つがあげられます。

 

  1. 少子高齢化
  2. グローバル化
  3. 消費の多様化
  4. 働き方の多様化

 

少子高齢化

まず、理由の一つは、日本では少子高齢化が進行していて、2008年をピークに総人口は減少に転じていることが挙げられます。このまま行けば、2060年には65歳以上の人口が総人口の4割近くに上ると推計されていて、15歳以上から64歳までの生産年齢人口の減少が懸念されています。

「平成30年版高齢社会白書」によれば、生産年齢人口は、2017年に7,596万人と総人口の6割を占めていましたが、2065年には4,529万人と約5割に減少すると推計されています。このような生産年齢人口の減少は人手不足を招き、企業活動に大きな影響を及ぼすと懸念されています。

日本商工会議所などが中小企業に対して行った2019年の調査では、約65%が「人員が不足している」と回答しています。また、帝国データバンクによると、人手不足倒産件数は年々増加しているとの事です。こうした中で、企業は海外からの労働者や女性の雇用を増やすなどの戦略変更が求められているのが現状です。

 

グローバル化

二つ目の理由は、グローバル化です。従来、国内の企業の生産活動が国内の消費によって支えられていました。しかし、テクノロジーの発展などによりグローバル化が急速に進み、国を超えた企業の経済活動への対応が求められています。国内市場の飽和で内需が減少した日本企業は海外進出で需要を喚起する一方、海外企業による日本進出は新たな競争を生んでいます。

また、日本の労働賃金の高騰は、賃金の安い中国や東南アジアへの工場移転をもたらすなど、1990年代からグローバル化が急速に進みました。このように消費規模や生産活動が大きく拡大する中で、企業は人種、国籍、言語、宗教、生活様式、働き方など多様な人材の活用を求められています

 

消費の多様化

三つめは消費生活の多様化です。日本では高度経済成長期以降、大量生産・大量消費の時代が長く続きました。その結果、国民は物質的には豊かな生活を享受し、車が何台もある家庭は珍しくないほどモノがあふれるようになりました。

内閣府の2018年に行った「国民生活に関する世論調査」では、「これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたいと答えた人が61.4%、「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」と答えた人が30.2%でした。また、今後力を入れたいものとしては、「レジャー・余暇」(35.2%)が最も多くなっています

このような消費生活の変化は、商品の所有に価値を見出す「モノ消費」から、体験や経験に価値を見出す「コト消費」への変化と捉えられています。スマートフォンやSNSなどの普及がこのような変化を加速させていると言えます。現在はさらに進化して、ハロウィンイベントや音楽フェスなど限られた場所や時間でしか経験できないことを求める「トキ消費」が注目されるようになっています。企業は今、このような消費行動の多様化への対応が求められています

 

働き方の多様化

四つ目は働き方の多様化です。決まった時間に満員の通勤電車で出勤し、遅くまで残業して寝るためにだけ家へ帰る、このような働き方が従来当たり前に思われていました。有給休暇も消化しないで働きづくめというかつての働き方は今、大きく変化しようとしています。

その背景に少子高齢化に伴う人手不足がありますが、国では2018年7月に働き方改革関連法を成立させ、働き方の多様化を推進しています。また、若い世代では縛られない自由な働き方を求める傾向が強くなっています。

それを象徴する言葉が「ノマドワーク」あるいは「ノマドワーカー」です。ノマドとは英語で遊牧民や放浪者の意味で、ノマドワークは場所や時間に縛られない自由な働き方を言います。パソコン一つ持ってネットで仕事をするエンジニアやプログラマーなどを中心に、会社などの組織に縛られたくないという若い世代などに広がり始めています。在宅勤務やノマドワークなど働き方の多様化が進む中、企業は対応を求められています

【ダイバーシティ経営のメリットとデメリット】

ダイバーシティ経営のメリット、デメリットは下記になります。

ダイバーシティ経営のメリット 3つ

 

  • 優秀な人材の獲得と授業員の定着
  • 新しいアイデアが生まれやすくなる
  • 企業の評価が上がる

優秀な人材の獲得と従業員の定着

人手不足が進む中、優秀な人材を自社に惹きつける重要性が格段に高まっています

ダイバーシティ経営により、さまざまな労働観や働き方の多様性を認めることで、社員が働きやすい魅力的な職場にすることができれば、優秀な人材を採用や離職率の低下を見込むことができます

また、日本人だけでなく外国人を雇用することで従業員の国籍にも多様性が広がり、日本人従業員とは違った考え方やアイデアを企業に取り入れることができます。

日本の労働人口が減少し続けていることも考慮すると、これから外国人を雇用することは新たな労働力の確保にもつながることでしょう

 

新しいアイデアが生まれやすくなる

年齢や性別や国籍といった表面的な多様性だけでなく、これまでの経験や価値観といった深層的な多様性も広がることで、新たなアイデアが生まれやすくなります

従業員の多様性がなく同質性の高い企業では、似たような視点や価値観からしか判断できず、革新的で創造的なアイデアは生まれにくくなり、多様化する消費者ニーズに対応することも難しくなるでしょう。

新しいアイディアも、0から1にするのが得意な人や、1から100にするのが得意な人など、さまざまな人が意見を出し合いながら形になっていくものです。

実際に、斬新的な製品やサービスが誕生し続けているアメリカのシリコンバレーでは、「研究者やエンジニアたちの過半数以上が外国生まれである」という調査結果もあり、新たなアイデアが人材の多様化により生み出されていることがわかります

 

企業の評価が上がる

ダイバーシティ経営に取り組んでいることが情報として社会に出ることで、資本市場における評価や企業価値も高まります

近年、企業への投資に際して、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の側面を重視して企業評価をするESG投資といった考え方も主流になっています

特に、ダイバーシティ経営の一環として、女性の活躍を推進することで注目を集める企業も多くなっています

 

ダイバーシティ経営のデメリット 3つ

 

  • コミュニケーションにおける従業員のストレス増加
  • チームや従業員のパフォーマンスを低下させる危険性
  • 周りに気を使うことが増える

 

コミュニケーションにおける従業員のストレス増加

ダイバーシティ経営を推進することで、さまざまな価値観を持った労働者が一緒に仕事をすることになります。

その結果、文化の違いや、言語の問題、仕事に対する考え方違いなどを感じ、ストレスを感じてしまう可能性があります

 

パフォーマンスが低下する危険性

多様性のある組織になると、考え方の違いから話が前に進まなかったり、場合によっては揉めてしまったりと、パフォーマンスの低下を引き起こす危険性があります

人は、過去の経験や環境により、誰もが無意識の偏見や固定概念を持っています。

無意識のうちに性別や年齢、国籍、人種などの違いを根拠に決めつけてしまうこともあるため、多様な人材が気持ちよく活動できない場合もあります

 

周りに気を使うことが増える

多様性を認めることで、どうしても少数派になってしまう人が出てきてしまいます

たとえば、日本人比率の高い企業の外国人従業員や、育児や介護などで短時間勤務をしている従業員です。

特に時短勤務の従業員では、自分の勤務状況が他のメンバーやチーム全体に迷惑をかけていると感じてしまうケースも考えられます

 

 

ダイバーシティ経営の進め方

 

 

では、ダイバーシティ経営の具体的な進め方について解説します。
以下、4ステップの進め方導入時の3つのポイントになります。

 

ダイバーシティ経営の4ステップ

 

1.経営方針を固める

ダイバーシティ経営では、多様な人材が集まることで今までにない革新的な発想が生まれますが、その一方で軋轢も生じます。解決に向けてどのように考え行動すべきなのか議論できるよう、理念と具体的な行動指針を経営方針として固めます

 

2.人事制度・人材登用

多様な人材を活用する場合、一律の評価制度・人事制度では機能しません。評価の不公平性が生じないよう、あらかじめ評価ポイントを明確に提示します多様な意見を取り入れるためにも、重要案件などへの登用をマイノリティ人材から積極的に行います。登用後に充分なフォロー(経験不足を補う研修など)をすることで、能力を充分に発揮できる環境を整えていきます。

 

3.ダイバーシティ促進の勤務環境・体制整備

障がい者など合理的な配慮が必要な従業員には、バリアフリー化など職場の整備を行います。勤務時間や通勤自体に制約がある人材でも意欲を持って能力を発揮できるよう、フレックスタイム制やテレワークなど、個々の事情に合わせた柔軟な働き方を導入します。

 

4.従業員の意識改革・能力開発

違いを活かすためにも、従業員(特に現場を指揮するマネジメント層)の意識改革が必要となります。加えて、マイノリティ人材がマジョリティの中でも活躍できるよう、メンター制度を通じたノウハウ提供やOJT以外のスキルアップ支援を積極的に行います。

 

ダイバーシティ経営を導入する3つのポイント

マイノリティ人材の管理者登用数など形だけではダイバーシティ経営を成功させることはできません。成功させるには以下の3つのポイントを意識する必要があります。

 

1.現状把握と目標の明確化

ダイバーシティ経営では、性別・国籍などの属性で従業員をカテゴライズし、割合や離職率・昇進ペースなどを可視化します。このように現状を把握することで、従業員数の推移を予測し、属性別の具体的な採用人数を決めるなど明確な数値目標を設定します

 

2.全体への影響を考慮した施策

特定層の従業員を活用するなどの施策を行う際は、それによる周囲への影響やコストを考慮し、歪みが生じないようフォローします。一部だけに注目するのではなく、全社的に見て組織力が向上する施策となるよう配慮することが重要です

 

3.充分な効果測定と改善

ダイバーシティ経営を実行したら、『従業員の活用ができているか』、『全社的に組織力が向上しているか』の2点について効果測定を行います。その際に従業員アンケートもあわせて行うと、経営データに加えて現場の声を織り交ぜられるようになり、最適な施策を出すことができます。

【まとめ】

 

 

ダイバーシティ経営は、目に見える具体的な「取り組み」ではなく、従業員の理解が必要な「概念」です。まずは事例にもあるように、ダイバーシティ経営を従業員が受け入れられるような風土づくりや、ビジョンの浸透が必要です。

また多様な人材の確保は、それぞれの価値観を認めることでもあるため、明確な評価制度の構築や人事制度を整備し、「全社的」な実行体制で進めることが大切です。

 

【参考書籍】


ダイバーシティ・マネジメント入門|経営戦略としての多様性

 

 


多様な人材のマネジメント (シリーズダイバーシティ経営)

 

本日のテーマは以上になります。

ご覧いただき、誠にありがとうございました!

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