【ビジネス】コンプライアンスとは一体何か(会社における法令遵守)

人事/労務/総務

どうもanjinです!

今日は『コンプライアンス』をテーマに取り上げて、書いていきます。

現代ではニュースでもよく取り上げられて、重要とされているワードです。言葉を知って分かった気になりがちですが、しっかりと理解出来てない人が結構いると思います。

基礎部分を中心に解説していきたいと思いますので、最後までおつきあいください。

【コンプライアンスとは】

 

 

コンプライアンス(Compliance)とは、直訳すると「要求や命令に承諾、追従すること」という意味です。

企業経営では法令遵守と解釈され、社会秩序に反さずに公正・公平に業務を行うことを意味しています。

しかし、最近では単なる法令遵守ではなく、「社会の規範や倫理観から外れていないか」「人間の道徳に反するものではないか」といった、より広範囲の判断軸を持つ考え方に変化してきています。

情報漏えいやハラスメントが注目されている現在では、「社会で明文化されている法令を守ること=コンプライアンス」と捉えるのではなく、法律・法令ではっきり定められていないことでも、社会倫理に従って判断し企業経営を行うことが求められています。

【コンプライアンスの歴史的背景】

 

 

「コンプライアンス」は1960年代のアメリカで始まった考え方です。

移民国家として誕生したアメリカは多様な価値観、考え方がごちゃ混ぜになってる多民族国家です。個人主義が強く主張される経済を一国の秩序ある経済システムとして統制するためには、法律やルールを細かく設定し、それらの規範を絶対的なものと国民に刷り込む必要がありました。

そのために考え出されたのが「コンプライアンス(法令遵守)」。現代でもアメリカでは「コンプライアンス」=「法令遵守」です。

日本では、企業経営の中で、コンプライアンス重視が叫ばれるようになったのは2000年に入ってからです。その背景には下記3つの要因がありました。

《規制緩和と企業責任の関係》

1970年代の日米貿易摩擦を契機に、1980年代に入ってから政府は内需主導による経済成長を目指し、3公社(電電公社、専売公社、国鉄)の民営化や規制撤廃を行うことで民間企業の参入と競争の促進を行ってきました。

それ以降、企業は、自由な競争の基で、活動できるようになりましたが、自らの活動にも責任が問われるようになりました。2000年に入り、政府は行政改革大綱で「企業の自己責任体制」を明確に打ち出しました。

これにより、各企業は自己責任体制の確立と、徹底的な情報の公開が要求されるようになったのです。

《企業不祥事の増加》

企業のコンプライアンス精神が重視されるようになったのは、1990年代から2000年代初頭にかけて不祥事が相次いだためです。代表的な例として、2000年および2004年の三菱自動車リコール隠し、2002年の牛肉偽装事件、2006年のライブドア事件など、多くの企業不祥事が発生しました。加また、粉飾決算による倒産の増加も、企業にコンプライアンス重視の姿勢を求める要因の一つとなっています。

アメリカでは、2001年12月のエンロン社の倒産、2002年7月のワールドコム社の倒産など、粉飾決算による大企業の倒産がありました。これを契機に、コーポレートガバナンスを重視する姿勢が求められ、監査の独立性や情報開示の強化などを規定した企業改革法(SOX法)が2002年7月に制定されています。EUでも2001年7月に「企業の社会的責任(CSR)に関するグリーンペーパー(政策の提案)」を発表するなど、CSRの推進を進めています。

《行政の方針変更と法改正》

2000年12月に閣議決定された「行政改革大綱」の方針のもと、関連法の改正も行われてきました。また、企業の不祥事や海外の動向を踏まえ、各企業にコンプライアンス体制の確立を求め、法改正を進めてきました。

2006年5月に行われた会社法の改正では、「資本金5億円以上もしくは負債総額200億円以上の企業は、適正な業務の遂行を確保するための体制の構築」を義務付けています。

また、2006年4月に施行された公益通報者保護法は、企業内部からその不正を告発した者に対し、解雇をはじめとした不利益な扱いが為されないよう企業に求めています。

このようにして、企業による不祥事、粉飾決算を起因とした倒産、行政方針の変更、法改正などがあり、企業にコンプライアンス重視の姿勢を求める世論が形成されるようになりました。

 

【コンプライアンスが重視される理由】

現在、企業活動においてコンプライアンスが重視されるようになったのには、主に下記2つの理由があります。

・ビジネスに「質」が要求されるようになったため

日本は急速な経済発展を経たことにより、一定以上の豊かさを手に入れましたが、その過程で様々なひずみや問題も表面化しました。そのため、利潤を追求するだけの経営では、企業の社会的な信用が得られない風潮が強まってきています。

社会的な規範や倫理に基づいた経営を求める声が強くなり、経営の「質」が問われるようになったことで、コンプライアンスの考えが浸透してきました。

この流れは現在ますます強くなっており、各企業は信用確保のため、コンプライアンス体制の確立に努めるようになっています。

・経済がグローバル化しているため

経済のグローバル化に伴い、海外の企業との取引が日常的となったことで、国内企業も世界共通のビジネスルールに従うことが求められるようになりました。

世界水準でビジネスの社会的意義や公正・公平であることなどがより重視されるため、社内のコンプライアンス意識の欠如は大きな問題となります。そのため、各企業でコンプライアンス体制の確立が重要視されています。

【コンプライアンス違反の事例】

 

 

企業がコンプライアンスを重要視する一方で、多くのコンプライアンス違反の事例が報道されています。

コンプライアンス違反というのは、言うまでもありませんが、法律に反した行動や社会的な道徳や倫理に反した行動をすることです。

企業のコンプライアンス違反の例として、以下のようなものがあります。

《企業に対するコンプライアンス違反の事例》

    • 粉飾決算などの不正会計
    • 脱税
    • インサイダー
    • 横領
    • 談合
    • 産地や性能の偽装
    • リコール隠し
    • 贈収賄
    • 個人情報の流出

《従業員に対するコンプライアンス違反》

    • サービス残業
    • 賃金不払い
    • 過労死
    • 社内告発のもみ消し
    • パワハラ
    • セクハラ

 

 

 

【コンプライアンス違反の防止策】

 

 

コンプライアンス違反の防止策は、下記3つの柱からなります。

1.違反を許さない強い決意をトップが示す

最も重要なのは、経営トップがコンプライアンス違反は許さないという揺るぎない決意を示すことです。

どのような施策を行おうとも、それが格好だけに終わり、本音ではルールよりも目先の利益を求めていると従業員に思われてしまえば、企業風土の改善は望めません。

コンプライアンス保持は、『企業価値を守り、株主を守り、従業員の生活を守るものである。

したがって、利益追求とコンプライアンス保持は車の両輪であることを、トップが力強く宣言し、従業員の意識を変える必要があります。

2.コンプライアンス保持の専門チームを設置

従業員にコンプライアンス保持を言うだけで、あとは個々人の判断に委ねてしまったのでは精神論を伝えたに過ぎず、何らの効果も望めません。

必ず、コンプライアンス保持を担当する部署を設ける』必要があります。

大きな組織ならば、外部の弁護士を参加させることが望ましいですが、
人員に余裕がなければ、兼任体制でも良いでしょう。

コンプライアンス担当チームは、重要な役割を担います。名ばかりのものにならないように、できれば社長直属として通常のラインからは独立した部署とすることが望ましいです。

コンプライアンス担当チームは、

・社内ルールの作成の統括
・コンプライアンス関連文書の管理
・コンプライアンス教育の計画と実施の統括
・従業員からの相談、報告の受付

など、コンプライアンスに関する業務を総合して担当します。

3.社内ルールの策定とメンテナンス

最後に、下記の2点をコンプライアンス担当チームが実施します。

①法令について、業務に関連する法令とその資料を集約する

②各事業所、各部署において、生じ得る違反リスクの洗い出しを行う

上記2つを纏めて社内ルールを策定して、従業員教育をすることで、全社員へ徹底させます。

これらも、コンプライアンス担当チームが統括します。こうして出来上がったルールは、いわば企業を守るための財産とも言えます。

これは一度作成して終わりではありません。常に、ルールのメンテナンスを行うことによって、より実効性のある規範となってゆくのです。

そのためにも、各部署から問題となった事例を報告させ、コンプライアンス担当チームが集約してゆく必要があります。

 

【参考書籍】

 


コンプライアンスのすべて ~取り組むことが求められるこれまでとこれからのテーマ

 

【CSRとコンプライアンスの関係】

 

CSR とは?

コンプライアンスを経営の根幹と捉え、推進するにあたり、必要となるのが「CSR(corporate social responsibility、企業の社会的責任)」の考え方です。社会的責任の対象には、株主、取引先、従業員はもちろんのこと、地域住民など、企業が関係する利害関係者全てとなっています。これらに対して責任を果たす必要があります。そして、社会的責任を果たす上で捉えるべき項目として、「企業倫理」「コーポレートガバナンス・内部統制」「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」などがあります。

企業倫理

企業倫理は、「企業が活動を行う上で、守るべき重要な考え方」です。それは、法令にとどまらず、労働環境や道徳的な考え方など、法令以外の範囲も含まれます。

コーポレートガバナンス・内部統制

コーポレートガバナンスは、「コンプライアンス遵守の上で、モニタリングやチェックを行う仕組み」です。そして、内部統制は、企業が自発的に内部で組織を統制する仕組みを指します。コンプライアンスを遵守するためには、コーポレートガバナンスや内部統制といったモニタリングやチェックを行う仕組みが必要です。

SDGs(持続可能な開発目標)

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択され、2015年から2030年の間に達成するために掲げられた17の目標です。SGDsは、CSR達成のための基準の一つとして捉えている企業が増えています。

CSRの意味を理解し、責任を果たすべき対象と項目を捉えることで、コンプライアンス遵守につながるのです。

コンプライアンスはCSR 経営の根幹をなす

企業の社会的責任(CSR)を遂行する上で、コンプライアンスがその根幹をなすことが分かります。そのためには、企業は、自社がコンプライアンスに取り組む方針を具体的に決め、その姿勢を具体的に示す必要があります。今回説明したコンプライアンスの考え方や取り組むにあたってのキーワードを理解して、各社に適したコンプライアンスの取り組みを実現していくことが大切です。

 

以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうございました!

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