どうもanjinです!
今日は労務分野において、『介護保険』について書きたいと思います。前回は『健康保険』を取り上げましたが、保険は皆さんも色々と関わっていると思いますので、基本的な部分から説明していきます。
【介護保険とは】
介護保険は、市区町村から要介護と認定された場合の支出に備えるための保険です。
国が運営する「公的介護保険」と民間の保険会社が運営する「民間介護保険」の2種類に分けられ、それぞれで加入条件や保険金の支払い条件が異なります。
公的介護保険は一般的に「介護保険制度」と呼ばれ、40歳以上の日本国民は介護保険への加入が義務化されています。
一方の民間介護保険は、公的介護保険でカバーできない部分を補填するために加入する介護保険で、保険商品ごとに決められた所定の状態になった場合に介護一時金や介護年金といった形で給付金が支払われます。
日本の社会は高齢化が進み、40歳を超えると強制的に介護保険に加入することになるので、介護保険の仕組みやサービス内容をしっかりと覚え、万が一のときの申請方法を事前に確認することが大切です。
【介護保険制度について】
介護保険制度は2000年に制定されたばかりの比較的新しい保険制度です。
日本では高齢化が進む中で、治療目的ではなく生活の支援(=介護)をするための長期入院が増加し、病床数が足りなくなるという問題が発生しています。その問題を解決するため、「施設介護から在宅介護への移行を助長すること」を目的に制定されました。
また、近年では核家族化(夫婦のみ、夫婦と未婚の子供、単身者)が進んでおり、「核家族に介護の負担を過剰に負わせないようにすること」も目的に含まれています。
介護保険法に基づいて3年ごとに見直しが行われていますが、サービス拡充に合わせて見直しのたびに保険料が値上がっているのが現状です。
〈介護保険制度の全体の流れ〉
介護保険制度の流れは、下記の4段階になります。
-
日本国民は全員、40歳になると保険料を払い、介護保険に加入する。
-
支払った保険料は、保険者(市区町村)の財源に預けられる。
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要介護認定された場合は、介護サービスを受けることができる。
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介護サービスを受ける際、料金の9割を保険者が給付してくれる(介護保険給付金)。
【介護保険の対象者】
介護保険の加入者には第1号被保険者(65歳以上の方)と第2号被保険者(40歳から64歳までの方)の分類があります。
保険料の支払い義務はどちらにもありますが、サービスの対象者 (受給者) は、原則として第1号被保険者だけです。
第2号被保険者は老化に起因する疾病(指定の16疾病)により介護認定を受けた場合に限りサービスの対象となります。
介護保険で対象となる疾病(特定疾病)
- 末期がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う)
【公的介護と民間介護の違い】
公的介護保険と民間介護保険の違いは、下記になります。
公的介護保険 | 民間介護保険 | |
---|---|---|
加入義務 | あり(40歳以上) | なし(任意加入) |
加入条件 | 65歳以上の人 40歳~65歳未満の健康保険加入者 |
各保険会社の規程による |
給付方法 | 現物給付 (所定の介護サービス) |
現金給付 (一時金、年金など方法は契約内容による) |
給付条件 | 65歳以上の場合は要支援状態・要介護状態になった場合 40歳~64歳の場合は老化が原因とされる特定疾病で要支援状態・要介護状態になった場合 |
保険会社との契約内容による 公的介護保険に準じる場合と保険会社が独自に定めた基準による場合がある |
民間介護保険は民間の保険会社によって運営される保険なので、統一的に記載できない部分がありますが、任意加入の保険であり、所定の状態になった場合に現金での給付を受けられるという点が公的介護保険との大きな違いです。
【介護保険料の計算方法】
介護保険の保険料の計算方法は、第1号被保険者と第2号被保険者では異なり、さらに、第2号被保険者は国民健康保険とそれ以外の医療保険への加入者では違いがあります。
第1号被保険者(65歳以上)の場合
第1号被保険者の介護保険料は、標準は9段階ですが、市区町村や特別区ごとに、収入によって段階別に、基準額や保険料率が独自に決められています。
例えば、東京都北区の場合は第1段階から第14段階まで設けられています。第6段階は被保険者本人に住民税が課税され、前年の合計所得金額が125万円以下のケースで、介護保険料は年額で、7万8,300円になります。
65歳以上従業員の介護保険料は、給与からは天引きされず、年金から天引きか、従業員が直接市区町村に収めるようになります。介護保険料の徴収は、65歳になる誕生日の前日の月から無くなりますが、市区町村への届け出は特に必要はありません。
第2号被保険者(40歳〜64歳)の場合
第2号被保険者で国民健康保険以外の医療保険に加入している場合
国民健康保険を除く、協会けんぽや組合管掌健康保険、共済組合などの医療保険に加入している第2号被保険者は、給与や賞与に介護保険料率を掛けて、介護保険料が算出されます。
そしてこの保険料の支払いは、事業所と被保険者で折半になります。
- 給料の介護保険料=(標準報酬月額)×(介護保険料率)
- 賞与の介護保険料=(標準賞与額)×(介護保険料率)
標準報酬月額には、給与などの報酬を区切りのよい幅で区切って決められているものです。通勤代や残業代も含まれ、5万8,000円から139万円まで50等級に分かれています。固定給が大きく増減したケースを除くと、年1回定時決定で決まった標準報酬月額が、その後1年間の保険料の計算に使用されます。標準報酬賞与額は、3か月を超える期間ごとに支払われる報酬から、1,000円未満の額を切り捨てたものです。
介護保険料率は健康保険組合によって異なり、協会けんぽの場合ですと、令和2年2月分まで1.73%、令和2年3月からは1.79%となっています。介護保険料は次の式で算出します。
- 介護保険料=(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率
例えば、通勤代などを含めた月額の報酬が23万5000円、賞与が42万9000円の人で協会けんぽに加入していた場合の保険料(令和2年3月以降)を考えてみましょう。標準報酬月額は24万円、標準賞与額は42万4000円になりますので、保険料は計算式に当てはめると次の通りです。
この介護保険を会社と従業員とで折半するため、それぞれの負担額は5,943円となります。
第2号被保険者で国民健康保険に加入している場合
国民健康保険に加入している第2号被保険者の場合は、所得割と均等割、平等割、資産割の4つを独自に組み合わせて計算され、介護保険料率も異なります。所得割は世帯ごとに被保険者の前年の所得に応じて算出されるものです。
均等割は被保険者一人についいて課されるもので、平等割は一世帯ごとに課されます。資産割は所有する土地や家屋に応じて、算出されるものです。
資産割がない自治体の場合の計算式は以下のようになります。
【参考書籍】
【介護保険のメリットとデメリット】
介護保険のメリットとは
- 要介護認定を受けると国の介護サービスが受けられる
- 自己負担はたったの1割
- 自治体によっては優遇サービスもあり
- 高齢化が進む日本では重要なサービス
- 民間の保険会社が独自のサービスを行っている
介護保険のデメリットとは
- 保険料負担がある
- 要介護状態になっても必ず給付が受けられるとは限らない
- 給付要件が「公的介護保険に連動型」の場合、公的介護保険が改正されると給付条件が変わってしまう可能性がある
以上が今日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうごさいました!
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