どうもanjinです!
今日は管理会計分野の『JIT生産方式』を説明します。これは、トヨタ自動車で取り入れられいる「ジャストインタイム」で有名かと思います。生産だけでなく色々な分野に適応できる方法です。具体的な内容を詳細説明します。
【JITとは】
『JIT』とは、「ジャストインタイム」の略語であり、英語「just in time:ちょうどそのとき、絶妙なタイミングで」からきた言葉です。日本では主にビジネスシーンで用いられ、製造のタイミングについて用いられます。製造品について「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」製造し、無駄なコストを省き、生産性を最大化できる上、エコロジーな企業活動が展開できます。
ジャストインタイムの考え方は、製造業務だけでなく、サービス業務にも充分通用します。例えば、先ほどのジャストインタイムの定義内の「物」を「情報」に置き換えると「必要な情報を、必要な時に、必要な量だけ」になりますし、「人員」に置き換えたら「必要な人員を、必要な時に、必要な量だけ」となりますので、そのまま通用しますね。
【JIT生産方式の起源】
ジャストインタイムの起源は、トヨタ自動車の実質的創業者である豊田喜一郎氏が提唱した生産方法にあります。彼は、挙母工場を稼働させる際、次のように語っていたそうです。
「無駄と過剰のない事。部分品が移動し循環してゆくに就いて『待たせたり』しない事。『ジャストインタイム』に各部分品が整えられる事が大切だと思います。」
挙母工場が完成する前から、彼は「ジャストインタイム」を口癖のように多用していたそうで、この信念は、第五代社長の豊田英二氏に引き継がれました。
現在のトヨタ自動車のもとは、自動織機を使った織物工場にあります。自動車部品の製造を始めたのは昭和8年で、織物工場内に自動車製造工場を設けて製造していました。しかし、もともと自動車専用の工場ではなかったために、設備に限界がきてしまったのです。
その状況を打開するために建設された、自動車製造を目的とした工場が挙母工場です。
上記でも説明しましたが、創業者・豊田喜一郎氏は、この挙母工場をつくるに当たり、「ジャストインタイム」を口癖のように唱えていたと伝わっています。
無駄を省く画期的な生産方法である「ジャストインタイム」を進めようとしていたトヨタ自動車でしたが、その斬新な発想が受け入れられるまでには時間がかかりました。加えて、戦況の悪化に伴って、物資を手に入れることが難しくなっていったのです。
1939年には、自動車生産用資材の割当配給制が施行されます。これにより必要に応じた種類や量を手に入れることができなくなってしまいました。これにより、ジャストインタイム生産は一時中断を余儀なくされたのです。
その後、ジャストインタイムが本格的に進められたのは、戦後になってからです。1954年、後工程が前工程へ必要なものを必要な分だけ取りに行く「かんばん方式」が考案され、ここでやっと喜一郎氏が求めていた「ジャストインタイム」が現実のものとなったのです。
合理的で斬新な「ジャストインタイム」の考え方は当初、なかなか受け入れられませんでした。しかし、紆余曲折を経つつ、少しずつその効果が認識されるようになり、今では世界中で知られています。創業者である喜一郎氏の発想は、今も受け継がれているのです。
【ジャストインタイムの目的】
ジャストインタイムの目的は、下記3つあります。
①生産性を高める
ジャストインタイムで期待されることは生産性の向上です。しかし導入によって生産性が直接的にアップするわけではありません。ジャストインタイムを取り入れて生産性が高い状態を維持できる体質に改善することが本質なのです。
導入したにも関わらず、なかなか効果が現れない場合、まず生産体制が改善されているかを見直すことが重要です。
②リードタイムを短縮する
リードタイム短縮の効果は、ジャストインタイムによって最も顕著に表れる部分です。リードタイムが短縮されることで、在庫を少なくできます。
さらに、作業工程の中で製造から検査までのリードタイムも短くなるため、ミスがあった場合早い段階で気付くことができます。それは、不良品を減らす・無駄な労働をなくすことにつながります。
何より、需要に見合った供給が可能になります。リードタイムが短ければ、需要がある分だけ生産できるため、結果として欠品や廃棄といった無駄がなくなるのです。
③売れるタイミングで生産する
在庫なし方式といわれるジャストインタイムの効果が顧客を待たせることが減る点です。
注文が入ってから生産、納品と進む流れがスムーズになるため、顧客を待たせることなく製品を届けることができます。結果、顧客満足度が高まり、企業イメージも向上するという相乗効果が生まれるのです。
また、売れるタイミングで製造するため、不要な生産がなくなり、コストや時間、場所、人にも余裕が生まれ、生産量もアップしていきます。
「ジャストインタイム」の成立に必要な3原則
「ジャストインタイム」を成立させるためには、3つの原則が必要となってきます。3つの原則とは、「後工程引き取り」「工程の流れ化」そして「必要な数によってタクトを決める」の3つです。
「後工程引き取り」
「後工程引き取り」とは、後工程(現段階の後ろに控えている工程)に必要なものを必要なだけ前の工程から引き取り、前の工程は引き取られた数だけ生産することを指します。
「工程の流れ化」
「工程の流れ化」とは、工程と工程の間で商品が「停滞しない」「後戻りしない」ことを意味します。細く速い流れで商品をつくることで、無駄を削減しているのです。
「必要な数によってタクトを決める」
「必要な数によってタクトを決める」とは、生産しなければならない数によって事前にタクトタイム(商品をつくるのに必要な時間)を決めておくことを意味します。必要な数によって生産する時間を事前に決めることで、「作りすぎ」や「商品が足りない」という事態を免れます。
事例:トヨタ「かんばん方式」
「ジャストインタイム」の例として有名なのが、トヨタ自動車株式会社の「かんばん方式」です。トヨタは「ジャストインタイム」を成立させるために、「かんばん方式」を取り入れました。「かんばん方式」とは、「いつ・どこで・何を・どれだけ」使ったかを「かんばん」に記し、使われた数だけ生産する方式を指します。
「かんばん方式」を取り入れることで、余分な生産や保管費などのムダを省けるのです。
ジャストインタイムのメリットとデメリット
〈ジャストインタイムのメリット〉
ジャストインタイムは無駄を徹底的に削減するために優れた生産技術です。具体的なメリットは3つ紹介します。
在庫量の最小化
ジャストインタイムは、在庫量を最小化できるという点が大きなメリットです。トヨタ自動車にジャストインタイムが導入された目的としては、在庫量を削減して徹底的に無駄を省くという狙いがありました。
通常、生産現場ではある製品・部品を納品した後、次回の納品に備えてすぐに生産に取り掛かるという方式を取っていることも珍しくありません。
これは確かに長期間に渡って受注量が安定しているなら合理的ですが、季節やトレンドによって受注量が変動する場合には在庫を抱えるリスクがあります。
ジャストインタイムは、「かんばん」を通して後工程から受注をした後に次回の生産に取り掛かるため、こういった在庫リスクを防ぐことができるのです。
コストの圧縮
在庫の最小化によってコストを圧縮できる点もメリットです。生産現場において在庫には大きく分けて2つの問題があります。
1つ目は、余分な物を生産するために、原材料費や人件費、光熱費、機械減耗など、さまざまなコストが発生してしまうことです。
もちろん生産したものが販売できるのであればコストは回収できますが、そうでなければ無駄になってしまいます。
2つ目は在庫管理のコストです。
生産したものを納品できれば問題ありませんが、在庫化してしまうとそれを保管したり移動したりするにもコストがかかるほか、処分する際も費用が発生します。
ジャストインタイムでは在庫を最小化することによって、こういった余分なコストを減らし、利益率の上昇に貢献するのです。
販売機会の獲得
ジャストインタイムによってリードタイムの短縮も可能になり販売機会を獲得できます。
大規模な製造現場において、販売機会と在庫管理のジレンマは常について回る問題です。
在庫を圧縮するためには、受注を受けてから生産する方式を採れば無駄がないのは確かですが、一方で在庫を減らすことばかり考えて生産を遅らせてしまっては、せっかくの販売機会を逃してしまうという問題があります。
ジャストインタイムは、このようなジレンマを克服するために優れたシステムです。顧客からの完全受注方式ではなく、後工程から受注を受けた時点で生産に取り掛かるので、リードタイムが長期化せず販売機会を逃しません。
ジャストインタイムのデメリット
ジャストインタイムにはデメリットもあります。ここでは主なデメリットを3つ紹介しましょう。
在庫切れリスク
ジャストインタイムでは、在庫切れのリスクがあります。
ジャストインタイムは、必要な時に必要な分だけを生産する方法のため、急に受注量が増加した場合にはスピーディな対応が難しいのは事実です。また、災害などによってサプライチェーンが止まってしまった場合、工程に必要な部品が足りなくなってしまうので、生産がストップしてしまうか可能性もあります。
品質管理コスト
品質管理の負担が増えるというデメリットもあります。ジャストインタイム方式でスムーズな生産を実現するためには、品質基準を満たす製品・部品を安定的に供給しなければなりません。
現場では余分な在庫を抱えないので、仮に基準に満たない不良品が多く発生してしまうと必要な部品が足りずに生産がストップする可能性があります。ジャストインタイムをスムーズに実行するには品質管理の負担が増す点には注意が必要です。
導入コスト
ジャストインタイム方式を導入するには時間やコストがかかるという点もデメリットです。
ジャストインタイムでは、在庫を削減するために「かんばん」という情報連携の仕組みを構築したり、効率的な供給体制を確立したりといった作業を行う必要があります。
トヨタ自動車のように大きな経営リソースがある企業では対応が可能でしたが、そうではない中・小規模の現場でこの方法を実現するにはコストがかかりすぎる可能性があるのです。
【まとめ】
「ジャストインタイム」とは生産方法の1つで、「必要なものを、必要な時に、必要な量」生産することを意味します。
「ジャストインタイム」により、在庫量や管理費を削減することができますが、在庫切れのリスクや下請け業者への負担など、デメリットも生じます。
どの企業にも「ジャストインタイム」が適しているというわけではないため、導入前に検討する必要があります。
【参考書籍】
以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうございました!
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