【労務】ビジネス教育 〈地震保険〉

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どうもanjinです!

今日は労務分野の『地震保険』について書きます。地震保険は前回の火災保険とセットで考えるものなので、火災保険の記事も参考にしてもらえれば嬉しいです。

【地震保険とは】

地震保険とは、『通常の火災保険では補償されない地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による損害を補償する保険』です。つまり、地震を原因とする火災は基本的には地震保険でしか補償されません。また、火災保険とセットで加入する保険なので地震保険単独では加入できません

地震はいつどこで発生するかの予測が非常に困難な災害である上、地震が発生したときの被害は広範囲にわたり、その被害額も甚大なものになることが容易に想像できます。

そのため、地震保険は、地震保険法に基づいて、「国と保険会社が共同で運営している制度」なのです

地震保険は地震保険法に基づき、損害保険会社を通じて提供された地震保険を政府が再保険しているので、どこの保険会社で入っても、最終的には政府と民間の損害保険会社が共同で補償する形になっています。従って、どこの保険会社で入っても、地震保険の補償内容や保険料は一緒で、競争原理が働かない公共的な仕組みになっています

【地震保険の特徴】

地震保険は損害保険のなかでも独特の保険で、さまざまな特徴を持っています。主な特徴は下記3点になります。

  • 火災保険とセットでないと加入できない
  • 公共性が高い“半公的保険”
  • どの保険会社でも保険料と補償内容が同じ

《火災保険とセットでないと加入できない》

まず地震保険で注意したいのは、基本的に火災保険に加入していなければ契約ができない点です。火災保険は火災から風水災まで自然災害による損害全般を補償する保険ですが、地震による損害は補償されません。いわば地震保険は、その火災保険の補償の空白をフォローする「特約」のような位置づけなのです。したがって、地震保険は単独で契約することはできず、加入するためには火災保険とセットで入る必要があります。

《公共性が高い“半公的保険”》

地震保険の大きな特徴として、公共性の高い保険だということが挙げられます。というのも、地震による損害額は非常に大きいので、地震保険を保険会社のみで運営することはできません。そこで、政府が再保険(いわば“保険の保険”)を通じて関与し、保険会社が保険金を支払えなくなるリスクをカバーしています。そのため、地震保険は公共性が高く、「半公的保険」とも言われています。

《どの保険会社でも保険料と補償内容が同じ》

上記で地震保険は政府が関与した“半公的保険”だと述べました。それは言い換えるなら、地震保険は「保険会社の利益」が織り込まれていない保険だということを意味します。そのため、通常の損害保険とは違い、支払う保険料や受けられる補償についてはどの保険会社でも一律に設定されています。

 

【地震保険の保険料】

《用語の定義》

保険関係は似た言葉が多用されるので、言葉の意味を定義します。

・保険料…契約者が保険会社に払い込む金額
・保険価額…保険事故が発生した場合に被るであろう損害の最高見積額
・保険金額…保険事故が発生した時、 保険会社が支払う限度額
・保険金…保険事故が発生した時、保険会社から実際に支払われる金額

《保険料の内容》

火災保険とセットで加入が義務になると、地震保険の保険料や保障内容を比較できないと考えてしまうかもしれませんが、この点は問題ありません。なぜなら地震保険の保険料、保障内容はどの会社で入っても基本的には同じだからです。保険料を決める要因となるのは次のものです。

・建物の立地する場所(都道府県)
・建物の構造
・保険金額

地震の発生可能性の高い地域とそうでない地域で保険料は変わります。また、建物の構造が耐火構造か非耐火構造かも保険料に影響します。

3つの条件がそろっているときは、どの会社で入っても保険料は同じ金額です

地震保険の保険料の目安は、保険金額1,000万円当たりで、鉄骨・コンクリート建築(耐火)の場合には年間7,100円~2万5,000円、木造建築(非耐火)の場合には年間1万1,600円~3万8,900円となっています。

参考:損害保険料算出機構『地震保険料率表』

総体的に見れば、耐火建築のほうが非耐火建築よりも地震による損害リスクが低いと考えられるので、保険料も安くなる傾向のようです。しかし、地震保険の保険料は、その建物の構造だけではなく、所在地(都道府県)にも影響を受けます。そのため、必ずしも地震保険の保険料として耐火建築のほうがリーズナブルというわけでもありません。

《保険料の割引》

地震保険には2つの割引制度があります。

1つ目は建物の耐震性能等を考慮して保険料が割引になる制度です。最大で50%も割引になるお得な制度です。

割引名 該当基準 割引率
免震建築物割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく免震建築物である場合 50%
耐震等級割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく耐震等級を有している場合 10%・30%・50%
耐震診断割引 耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法における耐震基準を満たす場合 10%
建築年割引 1981年6月1日以降に新築された建物である場合 10%

なお、これらの制度を重複で利用することはできません。

2つ目は、保険料を長期一括で支払う場合の割引制度です。割り引きの程度は係数で決まります。

保険期間 2年 3年 4年 5年
長期係数 1.90 2.80 3.70 4.60

たとえば5年間の長期一括支払いをすると、長期係数4.60が適用されるので8%の割引になります。

 

【地震保険の補償内容】

地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定することになっています。また、それぞれ保険の対象ごとに建物が5,000万円、家財が1,000万円という形で金額の上限も設けられています。

しかし、地震の被害に遭ったら保険金額を満額で受け取れるわけではありません。建物や家財の損害状況に応じて、支払われる保険金額は変わってきます

その認定基準は建物・家財ともに全損」「大半損」「小半損」「一部損の4つの区分に分けられており、設定した地震保険の保険金額をベースにして、全損は100%、大半損は60%、小半損は30%、一部損は5%の割合で支払われる仕組みになっています。こうした認定基準が設けられたのは、いざというときに迅速かつ公平に加入者へ保険金を支払えるようにするためです。

それぞれの損害状況の具体的な規定と、それに対応した支払われる保険金額の割合については、以下の表をチェックしてみてください。

参考:財務省『地震保険制度の概要』

ちなみに、2016年12月まで認定基準は「全損」「半損」「一部損」の3段階しかありませんでした。それが2017年1月に制度改正が行われ、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階へ変更となりました。

この旧区分と新区分のうち、どちらが適用されるかは、加入している火災保険の保険始期日によって判断できます。保険始期日が2016年12月31日以前であれば旧区分(3段階)、2017年1月1日以降であれば新区分(4段階)が適用されると覚えておきましょう



 

【地震保険のメリットとデメリット】

地震保険のメリット

地震保険のメリットは、やはり地震の被害に備えられる保険は原則地震保険のみだということです。また、民間の保険会社だけでは責任を負えないような巨大地震に備えて日本政府が再保険し、保険金を支払う体制が整えられているという信頼性もメリットといえます。

地震保険のメリット

  • 地震や噴火、それにともなう津波による住宅の被害を補償してくれる
  • 建物だけ、家財だけ、建物と家財の両方と各家庭の事情にあわせて入れる
  • 日本政府が再保険し、巨大地震の補償にも備えられている
  • 耐震性能の高い住宅には保険料の割引がある
  • 大地震でも早期の保険金支払いに向けた特別体制がとられる
  • 地震保険料控除で所得税・住民税が安くなる

地震保険のデメリット

地震保険のデメリットは、火災保険とセットでなければ入れないことや、実は地震保険だけでは建物を建て直したり家財を元通り買い直したりできないことです。

地震保険のデメリット

  • 火災保険に付帯するかたちでしか加入できない
  • 火災保険の保険金額の半分までしか加入できない
  • 保険金額には、建物は5,000万円、家財は1,000万円という上限がある
  • 地震保険の支払いは4段階の区分しかない
  • 居住地域や建物の構造によっては保険料が高い

 

火災保険・地震保険の値上げ

これから、ますます自然災害が大規模化していくだろうと考えられているので、火災保険の保険料も上がっていくと予想されます。ですから、火災保険を検討しているのでしたら、年内に契約をしておくのが有利と言えます。

 

【まとめ】

地震保険は、最大限に保険に加入しても、建物や家財の地震時点での価値(時価)の半分までしか補償されません

したがって、建物を建て直したり家財を元通りに買い直すことはできません。しかし、地震で被災した場合には、生活を立て直すための費用が必要になってくることから、地震保険はそのためのお金を用意する役割をになっているといえます。

地震保険は、建物を建て直すための保険ではなく、『生活を立て直すための保険』であるということを理解して、有効に活用することをおすすめします。

 

【参考書籍】


地震保険の理論と実務: 必ず来る震災に備えて

以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありとうございました!

 

 

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