どうもanjinです!
今日は会計分野の『無形固定資産』をテーマにとりあげます。以前解説した「のれん」も『無形固定資産』の一つになります。会社で経理をやられている方以外はあまり馴染みがない言葉なので、基本的な部分から書いていきます。
【無形固定資産とは】
「無形なのに固定資産なの?」「どういう資産が無形固定資産に区分されるの?」という疑問がある方もいるかもしれません。
無形固定資産とは、『企業などが長期間にわたって所有または利用することで収益をもたらす、具体的な形がない財産的な価値を有する固定資産の一つ』です。
大別すると「法律上の権利」と「それ以外のもの」に分けられ、特許権などの知的財産権や借地権などが前者に、のれん代や電話加入権、光熱水施設利用権などが後者に相当します。
企業会計上の処理では減価償却されるものとされないものとがあり、対象となるものは耐用年数にわたって費用化されます。
【固定資産の分類】
そもそも、固定資産とは何でしょうか?
会社は様々な資産を取得・所有し、それを元手に収益をあげていくというサイクルを繰り返していきますが、その中でも固定資産にあたるものは下記になります。
- 会社が所有する動産・不動産のうち販売目的ではないもの
- 取得価額が10万円以上のもの
- 長期的(1年以上)に保有をする資産
例えば、自動車販売店が販売目的で所有している車は商品ですので「棚卸資産」となりますが、自社の営業用車両は使用目的で所有している動産ですので「固定資産」となります。
固定資産のうち、「有形固定資産」が土地や建物のように「形の有る固定資産」であるのに対し、「無形固定資産」は読んで字のごとく「形の無い固定資産」です。
ソフトウエアはパソコンに入れてプログラムを動かすためのカラクリであり、形の有るものではありません。
同様に、商標権や意匠権は称号やデザインを独占的に使用する権利ですが、権利そのものを目で見ることはできません。
無形固定資産は固定資産として扱われますが、下記のように有形固定資産とは別に区分されているのです。
〈固定資産の分類〉
固定資産 | 有形固定資産 | 土地、建物、車、機械装置など |
無形固定資産 | ソフトウウェア、商標権、特許権、電話加入権など | |
投資 その他 | 株式、出資金、長期前払費用など |
【無形固定資産の種類】
無形固定資産は、「法律に関連する資産」と「それ以外の資産」に分けられます。
- 法律に関連する無形固定資産 …特許権、借地権、商標権等
- それ以外の無形固定資産 …のれん、ソフトウェア等
〈法律に関連する無形固定資産〉
特許権
特許権は、発明(自然法則を用いた技術的思想の創作のなかで高度なもの)を保護する権利を指します。
借地権
借地権は、建物の所有を目的とした地上権または土地の借地権のことです。借地権には定期借地権というものもあります。
商標権
商標権は、商品やサービスで使用する商標に対し与えられる独占排他権です。この効力は商標や指定商品に限らず、広い範囲に及びます。商標として保護されるものには、文字、記号、図形、音、立体的形状も含まれます。
意匠権
意匠権は、特徴のあるデザインに対して与えられる独占排他権です。意匠権として保護されるものとしては、物品全体のデザインだけではなく、部分的なもの、画像も含まれます。書作件は絵画などの純粋美術を対象とするのに対して、意匠権は工業利用のデザインが対象になります。
《それ以外の無形固定資産》
のれん
のれんは同じような業種の他の企業と比べ、超過している収益力のことを指します。のれんには「自己創設のれん」そして「有償取得のれん」の2つがあります。ただ、自己創設のれんは賃借対照表への計上はできません。一方、有償取得のれんは無形固定資産として計上が可能です。
ソフトウェア
研究愛初などにおける会計基準では、ソフトウェアはコンピューターを機能させるために表現されたプログラムなどのことを指します。企業会計上で無形固定資産とされるのは、自社で利用するソフトウェアです。
【無形固定資産の減価償却】
《減価償却の有無》
有形固定資産・無形固定資産を問わず、固定資産には減価償却ができる資産と減価償却ができない資産があります。
なぜなら、同じ固定資産でも「時間の経過とともにその価値が減少する資産」と「時間が経過してもその価値が減少しない資産」があるからです。
減価償却ができる資産のことを「減価償却資産」、減価償却ができない資産のことを「非減価償却資産」と呼びます。
有形固定資産 | 減価償却資産 | 建物、機械装置、車両など |
非減価償却資産 | 土地、造成費用など | |
無形固定資産 | 減価償却資産 | ソフトウエア、特許権、商標権など |
非減価償却資産 | 借地権、電話加入権など |
※参考:減価償却とは
減価償却とは、有形無形に関わらず固定資産の使用可能な期間が1年以上であるもの、取得価額が10万円以上であるものの両方を満たすものにつき、行われる会計処理です。これらの取得費を一括にして損金とせず、耐用年数によって分けて経費に計上する会計処理をいいます。経年による劣化に伴い資産価値を減少させ、それとともに売上に費用を配分することが目的です。
償却方法
無形固定資産の場合、償却方法は基本的に「定額法」で行います。
定額法とは、その資産の価値が減少する期間(耐用年数)に渡って毎年一定額を経費に落としていくという方法です。
定額法で無形固定資産を減価償却した際の仕訳は以下のとおりになります。
(具体例)
【例】10月に耐用年数5年のソフトウェアを現金300万円で購入した(3月決算)
(取得時の仕訳)
貸方 | 借方 |
ソフトウエア 300万円 | 現金 300万円 |
(決算時の仕訳)
(300万円÷5年)×6ヶ月/12ヶ月=30万円
貸方 | 貸方 |
減価償却費 30万円 | ソフトウェア 30万円 |
耐用年数
償却期間(耐用年数)は資産の種類によって期間が異なりますので、下記の表を参考にしてください。
種類 | 耐用年数 |
漁業権 | 10年 |
ダム使用権 | 55年 |
水利権 | 20年 |
特許権 | 8年 |
実用新案権 | 5年 |
意匠権 | 7年 |
商標権 | 10年 |
ソフトウエア 複写するための原本※1 その他のもの※2 |
3年 |
営業権(のれん) | 5年 |
参照:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表
※1 販売目的で制作した製品マスターや制作費、研究開発費。
※2 自社で利用するために購入したソフトウェア。
【まとめ】
無形固定資産の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。
- 固定資産のうちの一つであること
- 販売目的ではない、自社で使用する目的で所有する資産で「形が無いもの」
- 減価償却できるものとできないものがある
- 償却方法は基本的に『定額法』を使用する
資産計上漏れ等起こさないように、まずは無形固定資産となるものを確認して、その償却期間(耐用年数)を十分に把握することが重要です。
【参考書籍】
以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうごさいました!
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