どうもanjinです!
今日は会計テーマの『企業会計原則』について解説します。会計を学ぶものにとっては、基礎中の基礎ですが、簿記の勉強していてもこの基礎を忘れてしまっていることがあります。一般原則の基礎部分を中心に解説していきます。
【企業会計原則とは】
企業会計原則とは、『企業会計実務で慣習として発達した中かから、一般に公正妥当と認められる基準を要約したもの』です。決算書(財務諸表)作成においてに守るべき原理原則という位置づけですが、法令ではないため、法的な強い拘束力はもちません。しかし、法令でなくても、大企業、中小企業問わず、会計上順守するべき原則として、今日まで伝わってきました。企業だけでなく、会計監査においても従うべき原則とされています。
公表当初は重要な位置づけにありましたが、2001年以降は、企業会計基準員会によるさまざまな会計基準も重視されるようになりました。さらに、2008年にアメリカのワシントンで開催されたG20のサミット以降、国際基準へのコンバージェンスが図られるようになったことにより、以前ほど企業会計原則が重視されることはなくなっています。
しかし、企業会計における原則的なものですので、企業会計のベースとして知っておきたい知識です。企業会計は「一般原則」、「損益計算書原則」、「貸借対照表原則」、および重要性の原則などについて記された「企業会計原則注解」から構成されています。決算書のうち、キャッシュ・フロー計算書に関する原則ついては企業会計原則の中にありません。
【企業会計原則の構成】
企業会計原則は、以下の3原則にて構成されています。
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《一般原則》
- 企業会計における理念や指針を述べている部で、後述する7つの原則から構成されます。これらの原則は、損益計算書原則と貸借対照表原則の上位に位置づけられています。
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《損益計算書原則》
- 損益計算書における収益・費用の計上方法や表示方法について述べている部です。収益・費用の発生については、発生時点で計上する「発生主義」を原則としています。ただし、収益のうち売上高については、出荷基準や検収基準といった販売の実現に基づいて計上する「実現主義」を原則としています。
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《貸借対照表原則》
- 貸借対照表における資産・負債・資本の計上方法や表示方法について述べている部です。
また、企業会計原則には上記以外に注解も含まれ、その中で重要性の原則が規定されています。これは、重要性が低いものについては簡易的な会計処理をしても良いという原則です。
【一般原則】
一般原則は、下記7つの原則から構成されています。
2. 正規の簿記の原則
3. 資本取引・損益取引区分の原則
4. 明瞭性の原則
5. 継続性の原則
6. 保守主義の原則
7. 単一性の原則
それぞれ内容を個別に解説していきます。
「真実性の原則」
真実性の原則とは、財務諸表の内容が真実でなければならないという原則です。原文では、「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」と記載されています。
これ以外の原則に忠実でも、内容が虚偽であれば意味がありません。そのため、真実性の原則は7つの一般原則の中でも特に重要性の高いものとされています。
「正規の簿記の原則」
この原則では、正規の方法で簿記を行うことが規定されています。原文では、「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と記されています。
「正規の簿記」とは一般的に複式簿記のことです。複式簿記は網羅性・立証性・秩序性を備えているため、正規の簿記として認められています。
網羅性・立証性・秩序性の意味はそれぞれ以下のとおりです。
- 網羅性:すべての取引が漏れなく記録されていること
- 立証性:すべての取引について客観的な立証が可能であること
- 秩序性:すべての取引が継続的・体系的に記録されていること
「資本取引・損益取引区分の原則」
この原則は、資本取引と損益取引を区分することを規定しています。原文では、「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」と記されています。
資本取引と損益取引は本来まったく異なるものです。両者を混同すると正確な記録にはなりません。また、この原則は企業財務の健全性を確保するうえでも重要です。原則に忠実に従うことで利益隠しなどを防止できます。
「明瞭性の原則」
たとえ財務諸表の内容自体が正確でも、利害関係者の誤解を招くような表現を記載してはいけません。
そこで、明瞭性の原則として「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。」と定められています。
たとえば、勘定科目は独自に作成しても良いものですが、分かりにくい名称だったり説明がなかったりすると、利害関係者には理解できません。社内では共通の認識があっても、社外の人物に見せる書類である以上は明瞭に表現する必要があります。
「継続性の原則」
これは、会計処理方法や手続き方法には、一度採用したものを使い続けなければならないという原則です。安易な変更を認めてしまうと、利害関係者の混乱や利益操作のリスクが生じるためです。
原文では「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」と記載されています。
たとえば、今年、プリンター用紙購入費用の勘定科目を「消耗品費」にしたとします。その場合、来年、「事務用品費」に変更することは認められません。最初はどちらを採用しても構いませんが、一度消耗品費にしたのであれば、その後も継続する義務があります。
「保守主義の原則」
保守主義の原則とは、財務上で企業に不利益をもたらす可能性がある対象については、明確に記録する必要があるという原則です。
原文では「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」と記されています。
たとえば、得意先の債権が貸し倒れとなる可能性が非常に高い場合、貸し倒れが確定する前に損失処理することが求められます。実際に確定するよりも早めに損失処理しておくことで、企業の経営状態を健全に示すことができます。
「単一性の原則」
これは複数の帳簿の作成を禁止する原則です。
原文では「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。 」と記されています。
財務諸表は、提出先などに応じて複数作成することがあります。しかし、その場合でも基となる帳簿は1つにし、計算方法や表示方法も同じでなければなりません。
【損益計算書原則】
損益計算書原則が示しているのは、損益計算書における費用と収益の会計処理方法・表示方法に関係する基準です。
企業の経営状況を明確にするには、一定期間の収益と費用を記載した経常利益を表示しなければなりません。
さらに、特別損益に関する項目を加減し、当期純利益を表示する必要もあります。
費用と収益は全て支出と収入に基づいて計上されますが、その処理は発生期間に正確に割り当てることも重要です。
裏付けなく実現しなかった収益は、原則として当期損益計算に計上できません。
このように、発生した時点で全ての費用を計上する発生主義を原則としているのが、損益計算書原則です。ただし、損益計算書原則に含まれる総額主義の原則では、費用と収益を総額で表示できます。
【貸借対照表原則】
貸借対照表原則は、貸借対照表において資産・負債・資本の会計処理方法・表示方法を示す基準です。
貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにする役割があります。そのために、ある時点での資産・負債・純資産を全て記載して企業の利害関係者に正確に伝えなければなりません。
貸借対照表原則にも総額主義の原則があり、資産・負債・純資産を総額で記載するように定めています。
資産項目と負債あるいは純資産項目を相殺して、貸借対照表から除去することはできません。これが守られることによって、外部の利害関係者が企業の財政規模を正しく把握できるのです。
【まとめ】
企業会計原則は必ずしも全てに従わなければならないという決まりではないですが、金融商品取引法に密接に関係している企業行為の原則である事は常に念頭に置いておくべきです。経営成績を上げ社会の信頼を得るためにも、企業会計原則を守りながら『公正妥当』な企業会計処理を進めることが大切です。
【参考書籍】
以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうございました!
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