どうもanjinです!
今日は会計分野における『財務分析』を取り上げます。前回の『与信管理』を行う上では、財務分析を十分にできる事が非常に重要になってきます。もし、今回の記事読んで頂いた上で興味あれば、与信管理も読んでみて下さい。
【財務分析とは】
財務分析とは何でしょうか。
財務分析とは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表と呼ばれる資料を見ながら、企業の経営状況を分析することです。
財務諸表からはその企業の安全性や収益性がわかるだけでなく、他の会社と比べてどうなっているのか、ということもわかります。したがって財務諸表というものはその企業を表す大変重要な指標になります。
また、財務分析は外部分析と内部分析に分けられます。外部分析では取引先や投資家などが企業の経営状況を知るために必要としています。内部分析は企業の経営者の立場から会社の状況を把握するために必要なものとなっております。
外部分析では、この企業はきちんと支払いをしてくれるのか、投資してもいいのかなど、信用してもいいかを判断するために使われます。それ対して、内部分析は現在の企業の状況を把握したり、将来的に業績展開をしてもいいのかなど、現状を正しく知るために使用されます。
【財務分析の目的】
財務分析を行う目的は、『企業の経営状態を正確に把握するため』です。
「経営状態に問題はないか?」、「改善できるところはないか?」といった部分を確認することで、経営危機を回避したり、より会社を成長させたりすることができます。
逆に財務分析を怠れば会社の状況を正確に把握することができず、気づかないうちに倒産の危機が迫ってしまっていた、ということにもなりかねません。
だからこそ企業経営において、財務分析は必須であるというわけです。
そこでしっかりと経営状態を把握するために、財務分析では借対照表や損益計算書などの数字を使って以下の5つの分析を行います。
- 収益性分析
- 安全性分析
- 活動性分析
- 生産性分析
- 成長性分析
【5つの財務分析の指標】
財務分析において上記5つの分析指標を詳しく解説します。
1.収益性分析
収益性分析は、企業の利益について分析するものです。単に利益額での判断ではなく、利益率に注目します。収益性分析には「資本収益性」と「取引収益性」の2つの見方があります。
資本収益性
資本収益性は、総資本と自己資本が利益とどのような関係性にあるか、比率を分析します。
- 総資本経常利益率(ROA)総資本経常利益率(ROA)は、資本を有効に利用して、どれだけの利益を上げているかを示しています。数値が高くなるほど良好と判断されます。
総資本経常利益率(%)= 経常利益÷総資本×100
- 自己資本当期利益率(ROE)自己資本当期利益率(ROE)は、自己資本に対して当期純利益はどれだけ上げているかを示しています。数値が高いほど良好と判断されます。
自己資本当期純利益(%)=当期純利益÷自己資本(株主総資本)×100
取引収益性
取引収益性は、売り上げと利益の関係や費用の関係を分析します。
- 売上高総利益率売上高総利益率は、「粗利」ともいわれ、総売上額から原価を差しい引いた利益を示します。数値が高いほど良好と判断されます。
売上総利益高(%)=売上総利益÷売上高×100
- 売上高営業利益率売上高営業利益率は、総売上利益から一般経費を差し引いた残りの利益を示します。企業の経費がどのくらいかが把握でき、数値が高いほど良好と判断されます。
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
- 売上高経常利益率売上高経常利益率は、売上高の中での経常利益の割合を示します。数値は高いほど良好と判断されます。
売上高経常利益(%)=形状利益÷売上高×100
- 売上高販売管理費率売上高販売管理費率は、売上に対する一般管理費等の割合を示します。数値は低いほど良好と判断されます。
売上高販売管理費率(%)=販売管理費÷売上高×100
2.安全性分析
安全性は資本と負債のバランスを比較することにより分析することができます。資本よりも負債の方が大きいという会社は安全性が低いと言えます。流動比率により短期的な安全性を測ります。
- 流動比率流動比率は、短い期間内で返済できる力を判断します。期間とは1年以内を想定しており、流動資産科目は「現預金」「受取手形」「売掛金」に「棚卸資産」を加えます。流動負債科目は「買掛金」「支払手形」「短期借入金」になります。流動比率は高いほど良好とされます。
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
- 当座比率当座比率は、「当座資産」の流動負債に対しての割合を示します。短い期間内での返済の力を判断します。数値は高いほど良好とされます。
当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
- 固定比率固定比率は、自己資本に対して固定資産の割合を示します。数値は100%を下回り低いほど良好とされます。
固定比率(%)= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
- 自己資本比率自己資本比率は、総資本の中での自己資本の割合を示します。基本的に自己資本率が高い企業は安定していると評価し、数値は高いほど良好とされます。
自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本 × 100
3.活動性分析
活動性分析は、売上額を向上するため、資産を有効に活かしているかを判断します。
- 総資本回転率総資本回転率は、一定の資本で売上を向上させられるほど、回転率が良いことを示します。
総資本回転率(回) =売上高 ÷ 総資本(当期・前期末平均)
- 固定資産回転率固定資産回転率は、固定資産が効果的に活かされているかを示します。回転率が小さい場合は、固定資産に対して売上が少なかったり、固定資産に無駄があったりといったケースが考えられます。
固定資産回転率(回) = 売上高 ÷ 固定資産(当期・前期末平均)
- 棚卸資産回転率棚卸資産回転率は、棚卸資産の期末残高が相応であるかを示します。回転率が低い場合は、棚卸資産が多く、動きが鈍化している可能性があります。回転率が高い場合は、需要に対して供給が適当ではない可能性があります。
棚卸資産回転率(回)= 売上高 ÷ 棚卸資産(当期・前期末平均)
4.生産性分析
生産性分析は、「ヒト・モノ・カネ」を効率的に利用して企業の成長につなげているかを判断します。
- 労働生産性労働生産性は、社員1人当たりの売上総利益を示します。数値は高いほど生産性が良いとされます。企業は常に意識する必要があります。
労働生産性(円)= 付加価値額 ÷ 従業員数(2期平均) × 100
- 資本生産性資本生産性は、資本に対する付加価値を示します。どのくらい新たにプラスになっているか、数値は高いほど良好とされます。
資本生産性(円)= 付加価値額 ÷ 総資本 × 100
- 労働分配率労働分配率は、付加価値に対しての人件費割合を示します。人件費は給与以外の社会保険料や法定福利費なども加えます。数値は低いほど良好とし、バランスが判断されます。但し、業務内容によっては、良好とされる割合に差があるため、異業種で同じ比較はできません。
労働分配率(%)= 人件費 ÷ 付加価値額 × 100
5.成長性分析
成長性分析は、今後の成長性を判断します。売上や利益に伸びがあるか、企業の特性も含め将来性をみていきます。
- 売上高増加率売上高増加率は、前年の売上高と比較した際の増減を示します。数値は高いほど良好とされますが、急成長期、安定期もあるため、数年間との比較も必要となるでしょう。
売上高増加率(%)= (当期売上高 - 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100
- 利益増加率利益増加率は、企業の利益を元に成長性を示します。数値は高いほど良好とされますが、営業利益か当期純利益かで、どのような成長性があるかをみることができます。
利益増加率(%)= (当期経常利益 - 前期経常利益) ÷ 前期経常利益 × 100
- 総資産増加率総資産増加率は、企業の拡大率を示します。資産の増加を直接的な拡大とみるのではなく、利益増加率と併用して判断します。
総資産増加率 = 総資産増加額 ÷ 基準時点の総資産残高 × 100
- 純資産増加率純資産増加率は、純資産の拡大率を示します。
純資産増加率 = 純資産増加額 ÷ 基準時点の純資産残高 × 100
- 従業員増加率従業員増加率は、従業員が増加することでの企業の成長性を示します。業種によっては、設備投資とのバランスもあるため、単に数値だけで判断することは注意します。
従業員増加率 =(当期従業員数 - 前期従業員数)÷ 前期従業員数 × 100
- 一株当たり当期純利益(EPS)一株当たり当期純利益(EPS)は、企業の一株当たりの利益額を示します。
一株当たり当期純利益(EPS)= 当期純利益 ÷普通株式の期中平均発行済株式数
財務分析で経営状況を正しく理解しよう
1つのポイントだけで経営状況を判断するのではなく、5つの分析指標を総合的に見てから判断するようにしてください。なぜなら収益性があったとしても成長性がないのであれば、長期的に見てあまりよくない企業だと言えるからです。
財務分析によって、企業のさまざまな状況が見えます。それは、単に経営状況を客観的に判断できるだけでなく、今後の目標や改善点を見直す上で有益なものとなります。ただし、分析内容はあくまでも数値化されたデータでしかないため、業種などによってさらに分析していくことが求められます。
財務分析では過去の結果を踏まえた上で今後の成長を判断する指標ともなるため、数年間の流れを判断し経営に生かすことが大切です。
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