どうもanjinです!
今日は人事関係の『ジョブローテーション』について説明します。会社員の方で自社で導入されている方もいるかもしれません。今後導入を考えている方も参考になるように書いていきます。
【ジョブローテーションとは】
ジョブローテーションとは、『社員の能力開発を目的として、人材育成計画に基づいて定期的に職場の異動や職務の変更を行うこと』です。
日本ではよくある人材研修の一つで、職場異動は短くて半年、長くて数年など、期間は企業によって様々です。
会社には実に多様な業務があり、業務ごとに部署が作られ、そこに属する組織人が日々活動することで企業活動を行っています。当然のことながら、沢山の人が日々活動しており、その部署がどういう活動を行っているかを瞬時に理解し把握することは物理的に不可能です。
このようなことから、新入社員等が、どういう会社なのか、どんな活動をしているのかなどを把握し、人材交流の意味も含めてジョブローテーションを行います。
基本的には実際にその部署の中で業務を学ぶOJTで進められます。「新入社員の研修として、数ヶ月かけて会社内の状況把握や適性を判断する目的で実施する」、また、「幹部候補社員を短期間で会社内の人材、内容把握として実施し、将来会社を背負って立つ人材へと育てる」ことを意図して活用することもあります。
【ジョブローテーションが出てきた背景】
海外では個人のスキルアップは転職によって自分で勝ち取るスタイルが主流ですが、終身雇用が前提となっていた日本企業では、その会社に詳しい優秀な人材が求められてきました。
担当職務に詳しいだけでなく、会社のあらゆる業務に精通し、運営者としての視点を持てる人材です。
ジョブローテーションでは、多様な業務を経験させることでそういったジェネラリストや幹部候補を育成できるため、日本では多くの大企業・中堅企業に導入されてきました。
しかし、現在の日本では、グローバリゼーションや各業務の高度化・複雑化によって、時代にふさわしくないという意見もあります。
下記において、ジョブローテーションの目的やメリット・デメリットを解説し、実際に導入する手順を記載します。
【ジョブローテーションの目的】
ジョブローテーションの目的は、主に下記の3つになります。
- 人材育成
- 企業全体の把握
- 属人化の防止
人材育成
ジョブローテーションは、企業内のさまざまな職種や部署を経験させることができるため、新人研修などで多く用いられています。
目的は、入社後のジョブローテーションで多様な職務に就いて、実務を通して経験しながら、適正や本人の意向を見極めて正式な配置を決定し、人材を育成することです。
企業全体の把握
事業規模が大きければ大きいほど、部署や職種の数も増えてきます。従業員がそれらの部署でさまざまな職務を経験することで、企業の全体像を把握できる人材となります。
また、幅広い視野を得ることで、偏ったり固定されたりした部署に所属していては生まれなかったアイデアの喚起も期待できるでしょう。
属人化の防止
その人にしかできない仕事が多ければ、その従業員の負担は大きくなります。ワークライフバランスが叫ばれる現代にもかかわらず、従業員の多様な働き方を阻んでしまうでしょう。
さらに、従業員一人の退職リスクを抱えてしまうことにもなる可能性があります。
ジョブローテーションは属人化を防止し、従業員に業務の共有化を促してくれるだけでなく、退職リスクなどの軽減にも一役買っています。
【ジョブローテーションと人事異動の違い】
【企業側】ジョブローテーションを行う際のメリット・デメリット
企業側:ジョブローテーションのメリット
適材適所の判断基準となる
企業の生産性や利益の向上のためには、適材適所の人材配置が重要です。とはいえ、特に新入社員はどの業務に適性があるかを見抜くことが難しいケースもあります。ジョブローションを通じて実際にいくつかの業務を経験することで、強みや弱みが明確になるため、適材適所の判断基準となります。
社員間の交流が盛んになり、部署間の連携が円滑になる
プロジェクトの内容によっては、成果を上げるためにさまざまな部署との連携が必要になることもあるでしょう。しかし、プロジェクトを始めるときに、普段関わりがない人といきなり関係構築をしていくのは困難です。ジョブローテーションを取り入れることで、異動者が橋渡し役となり、部署間の連携が生まれやすくなります。
イノベーションや新たなアイデアが生まれる
企業の成長のためには、時として変革が必要です。特定の部署しか経験したことのない社員が多い場合、知識や発想が偏り、変革が起こりにくくなる可能性があります。ジョブローテーションによって、他部署との交流や個々の知見を増やすことで、これまで思いつかなかったアイデアや課題に気付く機会が増え、変革につながるでしょう。
業務の属人化を防ぐ
同じ社員が同じ業務を長い間担当していると、業務が属人化されてしまいます。ジョブローテーションによって、複数の社員が業務をできるようになれば、いざというときの代替要員を確保できるほか、業務の一極集中がなくなりワークライフバランスも整えやすくなります。
企業側:ジョブローテーションのデメリット
一時的に生産性の低下が起こる
ジョブローテーションを行うと、社員は定期的に部署が変わり、新たな業務にチャレンジします。そのため、新しい業務に慣れるまでに一定の時間がかかる、受け入れる側も指導に時間を取られてしまう、後任への引継ぎ中に業務が停滞する…といった要因により、一時的に生産性が低下する可能性があります。生産性の低下を最小限にするため、ジョブローテーション直後はスキルの高い社員を近くに配置するなど、サポート体制を整えておくことが大事です。
社員の退職につながる
ジョブローションで新しい仕事を経験する中で、社員が「自分にはこの業務が合わない」と感じる場面もあるでしょう。また、一つの業務をじっくり経験できないことや長期のプロジェクトを最後まで担当できないことなどに不満を感じる社員が出てくるかもしれません。そうした要因により、将来を期待して育成してきた社員が退職を検討し出す可能性があります。そのような事態を防ぐため、社員との1on1を通じ、本人の希望と会社の期待をすり合わせる場を定期的に設けましょう。
スペシャリストの育成に適さない
ジョブローテーションでは一定期間で業務内容が変わってしまうため、新しい業務の表面的なことは理解できても深い部分までは理解しにくいという課題があります。そのため、幅広い知識や経験を有する「ジェネラリスト」の育成に適していますが、特定分野の知識や経験を有する「スペシャリスト」の育成には適さない場合もあります。スペシャリストの育成が人事課題であれば、ジョブローテーションは避けましょう。
【社員側】ジョブローテーションを行う際のメリット・デメリット
社員側:ジョブローテーションのメリット
多角的な視点が身につく
それぞれの部署や職種が企業の業績にどのように貢献しているのかは、実際にその業務を経験してみないとわからないことも多いでしょう。ジョブローテーションによって、さまざまな業務への理解が深まり多角的な視点を身に付けることができ、これまで交流のなかった社員と関わることで視野も広がります。その経験は、将来、重要なポジションを経験する際に活かすことができるでしょう。
社内にネットワークができて仕事がしやすくなる
ずっと一つの部署で働いていると、普段接する相手は同じ部署の社員や同期など限られたメンバーになりがちです。ジョブローテーションにより新しい業務を経験することは、これまで関わることのなかった社員との交流のきっかけにもなります。それにより社内にネットワークを作ることができるため、他部署と合同のプロジェクトが円滑に進むなど、仕事がしやすくなる効果が期待できます。
様々な職種が体験でき、自分の適性を見つけるチャンスに
ジョブローテーションは、社員にとっては未経験の業務にチャレンジできる良い機会です。さまざまな職種を経験することで、「どういうことができるのか」「どういう仕事をしたいと思うのか」といった自分自身の適性や興味を発見することができます。これまではわからなかった適性に気付くことで、自分自身の可能性が広がり、今後のキャリア形成に向けて意欲的に仕事に取り組むきっかけとなるでしょう。
社員側:ジョブローテーションのデメリット
専門性が身に付きづらい
ジェネラリストを目指す社員もいれば、スペシャリストを目指す社員もいます。幅広い業務の概要を知ることができるジョブローテーションは、ジェネラリスト志望の社員には魅力的なものですが、スペシャリスト志望の社員にとっては専門性に特化できないことから、受け入れ難いものです。そうした不満がきっかけで社員のモチベーション低下や退職につながる恐れがあるため、企業側は社員のキャリアプランを面談などで事前に把握しておく必要があります。
希望の業務以外の仕事も一定期間行う必要がある
特定の仕事を希望して、入社する企業を決めた社員もいるでしょう。ジョブローテーションは人材育成計画の一環で行われるため、希望する業務以外の仕事を一定期間することになるケースがあります。そのため、得意分野のある社員などは特に、「どうしてこの仕事をしないといけないのか」と不満を抱きます。それにより社員のモチベーション低下や退職につながる恐れがあるため、企業側はジョブローテーションの対象となった社員の様子を定期的に確認しましょう。
異動すればまた新人状態となり、キャッチアップが大変
これまで一つの部署で実績を積んでいても、ジョブローテーションをすれば、異動先ではさまざまなことを新たに一から覚えなければいけません。ジョブローテーションをすることで、言わば「新人」と同じ状態になってしまいます。新しい業務を覚えるにはある程度の時間がかかるため、異動先で戦力として認めてもらえる状態にまでキャッチアップするのは大変です。前任者からの引継ぎを確実に行う、OJT担当を決めるなど、異動してきた社員をサポートする仕組みを整えましょう。
ジョブローテーション制度の向き不向き
これまで見てきたジョブローテーション制度ですが、業種・業界や業務内容によっては向き不向きがあります。いくつかの例を紹介します。
ジョブローテーション制度が向いている企業
- さまざまな業務が一連の流れでつながっている企業。工程の前後を知ることで、業務がスムーズに行えるようになります。
- さまざまな業務を経験した上で、現場と本部を行き来して蓄えた知見を、別の部署で活かせるケースが多い企業(金融機関など)。
- 専門知識を幅広く有した方がいい企業。さまざまな知識が商品やサービスに集約されている場合、できることとできないことを理解している方が顧客や他部署との折衝などスムーズにできます。
- 文化をひとつにしたい企業(M&Aを行った企業、店舗や地方支社が多い企業など)。
- 大規模企業。同じようなステージの人が多いので異動を組みやすいですし、人材交流を積極的に行うことで、新たなアイデアや業務改善案が生まれやすくなります。
ジョブローテーション制度が向いていない企業
- 専門性が高く、その知識やノウハウ、資格を得るのに長い時間がかかる業種。職人の技術が重要となる企業。
- 長期間にわたるプロジェクトを請け負うことが多い企業(コンサルティング会社など)。
- ローテーションを行うと業務が回らなくなってしまう中小企業。
ジョブローテーションの導入フロー
ジョブローテーションの導入方法を、順を追って紹介します。
- 対象者の選定
- 配属先の決定
- 実施期間と目標の設定
- 対象者への連絡
- 実施
- 次の部署への異動
対象者の選定
ジョブローテーションを導入する際、最初に検討したいのが、「誰を異動させるか」です。年齢や勤続年数をもとに対象者を選出しましょう。人事データが蓄積させている場合、AIを活用して候補者を選出する方法もあります。
配属先の決定
ジョブローテーションを効果的に進めるために重要なのは、候補者に合った配属先を選ぶことです。そのため、慎重に配属先を決める必要があります。対象者のキャリアプランや性格、どの部署で人員を必要としているかなどを考慮した上で、配属先を決定しましょう。
実施期間と目標の設定
対象者と配属先が決まったら、実施期間と具体的な目標を設定します。「どういった目的で実施するのか」を踏まえた上で、配属先でどのようなことをどのくらいの期間で習得させるのかを決めましょう。
対象者への連絡
ジョブローテーションの対象者に、実施内容を知らせる必要があります。対象者のモチベーションを上げるため、実施期間と目標のみならず、「どういったことを期待しての異動か」といった理由も示すようにしましょう。
実施
対象者の了承が得られ、受け入れる側の準備も整ったら、ジョブローテーションを実施します。実施中は「どういった業務をどのレベルまでできるようになったのか」「最初に立てた目標通りに進んでいるか」など、対象者の現状を定期的に確認しましょう。
次の部署への異動
最初に決めた実施期間が終わったら、次の部署へ異動します。本人のキャリアブランや年齢の他、異動した先で得たスキルや経験も考慮した上で、新たな配属先を決めましょう。
【まとめ】
ジョブローテーションは、人材育成の目的からその社員のキャリア形成を促します。
実施にあたっては自社の事業特性を検討し、メリット・デメリットを十分に検討しましょう。
ジョブローテーションは、受け入れる部署を始めとして多くの部署を巻き込み、連携する必要があります。
ジョブローテーションを成功させるためには、企業トップ自らがジョブローテーションの目的と有効性を社内外に宣言することが大切です。
公表することにより、ジョブローテーションが全社に浸透し全社一体となって人材育成に取り組むことができます。
終身雇用制度が廃止されている中でこそ、社員に成長の機会を与え続けられる企業文化の醸成が必要だと思います。
【参考書籍】
本日のテーマはここまでになります。最後まで見て頂き、ありがとうございます!
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