【管理会計】ビジネス教育 〈原価計算〉

会計(財務会計/管理会計)

どうもanjinです!

今日は管理会計テーマの基礎である『原価計算』を解説します。簿記の勉強していても触れる部分なので、聞いたことがある人も多いと思います。今回は基礎的な用語を中心に書いていきます。

【原価計算とは】

原価計算とは、「その名の通り商品の原価を計算する方法」のことを言います。

原価計算を正確に行うことによって、商品を作ってそれを売るためにかかった費用の計算が可能になります。そのため、『同時に商品が1個売れるたびにどのぐらいの粗利を得られるのか?』を知ることができます。
粗利とは、簡単に言えば商品を売った時にどのぐらいのお金が手元に入ってくるのかを表す数値です。

多くの企業にとって、『どのぐらいの粗利が得られるのか?』は企業の業績に決定的に大きな影響を与えます。
企業が存続していくためには安定的に利益を計上していく必要がありますから、原価計算を正確に行い、計画的に企業運営を進めていくことが重要となります

 

【原価計算の目的】

原価計算基準には『原価計算の目的』があり、原価計算を行う目的が下記5つ記載されています。

 

  • 財務諸表作成の目的
  • 価格計算の目的
  • 原価管理の目的
  • 予算管理の目的
  • 経営計画策定の目的

財務諸表作成の目的

《原価計算基準  原価計算の目的(一)》
『企業の出資者、債権者、経営者等のために、過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。』

 

株主やお金を借りている銀行などに、会社の経営成績を報告するために作るのが財務諸表や決算書で、原価計算は欠かせません。

財務諸表の一つ、損益計算書(P/L)には「売上原価」が記載されます。

売上から売上原価を除いた「売上総利益(粗利)」は重要な経営指標の一つです。

売上総利益(粗利)=売上-売上原価

売上総利益が低ければ、営業利益や経常利益といった会社の利益も少なくなってしまいます。

価格計算の目的

《原価計算基準  原価計算の目的(二)》
『価格計算に必要な原価資料を提供すること。』

 

作った商品をいくらで売るのかを決めるために、原価計算は必要です。

原価よりも高い価格で売らなければ、利益が出ません。

原価を正確に把握すれば、適正な価格はいくらか、どこまで値下げができるのか、といった判断が合理的にできるようになります。

原価管理の目的

《原価計算基準  原価計算の目的(三)》
『経営管理者の各階層に対して、原価管理に必要な原価資料を提供すること。』

 

『コスト削減できるところはどこか』を把握するために原価計算を行います。

原価として何にいくらかかっているのかがわかれば、無駄を削りやすくなります。

「店舗の家賃が高すぎる」「材料の値段が上がっている」などのコストを把握するために、原価計算を使用します。

予算管理の目的

《原価計算基準  原価計算の目的(四)》
『予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供すること。』

 

次期の予算編成をする目的で原価計算を行います。

利益の目標額を決めても、原価がわからなければ目標の立てようがありません。

原価計算を行うことで、費用の項目別に予算目標を立てることもできます。

  • 材料の安い仕入先を見つける
  • 効率化で残業代を減らす
  • テナント家賃交渉をして賃料を減らす

 

原価においてどこが無駄なコストなのかを把握して、原価の目標額を決めて予算編成を行うことで前年よりも利益が改善するはずです。

経営計画策定の目的

《原価計算基準  原価計算の目的(五)》
『経営の基本計画を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること。』

 

中長期的な視野で、経営計画を策定する目的で原価計算を行います。

「3年後の売上は2倍に、利益は3倍にする」といった経営計画も原価計算を行わなければ、達成可能かどうかがわかりません。

原価計算を行うことで、経営計画の数値的な根拠を持たせることができます。

 

【原価の種類:形態別分類】

細かくすれば原価というのは多くの種類があります。しかし大まかには「材料費」「労務費」「経費」という3つの区分しかありません。

材料費

製品を製造するために使用した原材料や部品にかかる費用です。サービスならば、サービスを提供するために使用したモノの費用が該当します。物品の消費に応じて発生します。

材料費をさらに細かく見ると5つにわけることができます。

【材料費の内訳】

  • 素材・原材料費:製造される物の主な材料
  • 買入部品費:外部企業から仕入れて使用する物
  • 燃料費:製造にかかるガス代、燃料など
  • 工場消耗品費:製造工程で補助的に使用される少額のもの
  • 消耗工具器具備品費:耐用年数が1年以内、金額が10万円以下の工具や器具

労務費

従業員の給与や福利厚生など、製品を製造(サービスを提供)するためにかかる人件費が該当します。

労務費をさらに細かく見ると6つにわけられます。

【労務費の内訳】

  • 賃金:製造現場・工場などで働く人に支払われる費用
  • 給与:主に事務所など、製造現場外で働く人に支払われる費用
  • 雑給:パートタイマーやアルバイトへ支払われる費用
  • 賞与手当:年に数回のボーナス、報奨金、夏季・冬季手当として支払われる費用
  • 退職給与引当金の繰入:将来支払われる退職金として企業内で毎月積み立てられる費用
  • 福利厚生費:社会保険の会社負担分など

 

経費

材料費と労務費以外の費用が該当します。しかし販管費は財務費は含まず、主に設備やテナントにかかった費用を指します。

経費も細かくわけられますが、材料費と労務費とは分類方法が異なります。

  • 測定経費:電気代や水道代などメーターが設置され消費量が測定できる経費
  • 支払経費:何に発生した経費か直接把握できる経費
  • 月割経費:賃貸料や保険料など数か月分を支払う経費
  • 発生経費:発生はしているが、お金の支払いは伴わず経費として把握しておくもの

 

【原価の種類:目的別分類】

直接費(製品・サービスへ明確に関わっている)

直接費とは、どの製品の製造に使われたのかが明確な費用です。たとえば、部品AとBを組み合わせて製品Cを作る場合、AとBがCの製造に使われたことは明確です。

したがって、部品AとBにかかる原材料費は直接費の1つである直接材料費に分類されます。また、製品Cの製造にのみ従事する作業員の給与も、Cの製造にかかっていることが明確です。そのため、直接費の1種である直接労務費に分類されます。

間接費(製品・サービスへ直接関わらない)

間接費は、直接費とは逆に、どの製品の製造に使われたのかが曖昧な費用です。主に、形態別分類における工場消耗品費や消耗工具器具備品費が該当します。

また、製造に直接関与していない従業員の労務費も間接費に該当します。たとえば、事務に携わる従業員の給与は間接費です。

そのほか、電気代や水道代、修繕費、減価償却費など、形態別分類における経費の多くが間接費に該当します。

 

【原価計算の種類:目的別分類】

続いて、原価計算の種類を見ていきましょう。原価計算の分類にはいくつかの方法がありますが、ここでは目的別に3種類に分けて紹介します。

標準原価計算(標準値に基づいて算出する)

標準使用量や標準使用時間から算出する原価を標準原価といい、その計算を標準原価計算と言います。実際の使用量や使用時間から算出するわけではないため、精度が低いと実際の数値と合わなくなる可能性があります。

しかし、実際の数値を用いないことによるメリットもあります。標準原価計算によって算出した原価と実際の原価の差異が大きい場合、作業効率に改善が必要だと判明することです。したがって、コストダウンや原価管理目的で算出するのが一般的です。

実際原価計算(実績値に基づいて算出する)

実績原価計算は、標準原価計算とは異なり、実際の使用量や使用時間から原価を算出する方法です。標準原価計算よりも高い精度で実際のコストを算出できます。したがって、実際原価計算は現状を把握するために行われます。

標準原価計算の結果と大きな差異があれば、実際の作業に問題があるということです。標準原価計算の結果を目標とし、実際原価をそれに近づける取り組みをすることで、製造の効率を上げられるでしょう。

直接原価計算(固定費と変動費に分類する)

直接原価計算は、実際原価計算をさらに詳しくしたものです。実際原価計算の計算対象を、変動費と固定費に分けて考えます。変動費とは、製品の生産量に比例して発生する費用のことです。逆に、固定費は製品の生産量に比例しない費用を指します。

固定費は製品の生産量が増えるほど、全体の費用に占める割合が小さくなります。製品を多く製造するほど、1つの製品を作るのにかかる固定費は減少するのです。

例えば、機械を組み立てる場合、その部品にかかる費用は変動費です。一方、組み立てに使う工具の費用は固定費に分類されます。

固定費と変動費を分けて考えることで、実際の採算性を分析しやすくなります。そのため、直接原価計算法は損益分岐点分析などに利用されています。

 

【原価計算の種類:生産形態別分類】

原価計算を生産形態別に分けると以下の2つに分けられます。

  • 総合原価計算
  • 個別原価計算

 

さらに総合原価計算は3つに分けられます。

以下で一つずつ説明してきます。

総合原価計算

1つから複数の規格品を連続して量産する場合に用いられる計算方法です。

多くの会社・工場で採用されており、総合原価計算はさらに3つに分類されます。

単純総合原価計算

総合原価計算の基本になる計算方法で、1つの製品を量産する場合に使用される方法です

さらに詳しく見ると、単純工程単純総合原価計算と工程別単純総合原価計算に分けられます。

等級別総合原価計算

同じ規格品を連続して製造しますが、品質などで等級をわける必要がある場合に使用されます。等級とはサイズ、機能などがあげられます。

さらに詳しく見ると、単一工程等級別総合原価計算と工程別等級別総合原価計算にわけられます。

組別総合原価計算

同じ種類の製品ですが、デザインなどが違うものを量産する場合に使用されます

さらに詳しく見ると単一工程組別総合原価計算と工程別組別総合原価計算にわけられます。

工程別とは、第一工程、第二工程など次の工程へ引き継がれながら製造される場合において、工程ごとに計算をすることです。

どの工程でロスが出ているかなど把握ができます。

個別原価計算

顧客からの個別注文に応じて製品を受注し、そのつど原価を計算する方法です。

主に建設業やソフトウェア開発などで採用されています。

【原価計算と原価管理の違い】

原価管理とは「原価計算という道具を使用して、業績が向上する仕組みを作り、行動するためのもの」です。

原価計算と原価管理を事例で考えてみましょう。例えば、ハンバーガーセットを650円で売るとします。まずは、広告宣伝のような期間に対応する費用、売上高に直接対応するパンとハンバーグのような費用を分類します。

その分類した費用のうち、売上高に直接対応する費用が原価となり、これを1人前毎に集計するのが原価計算です。

ハンバーガーセットの原価を把握した上で、いかにして利益を生み出すのかを考えること、それが原価管理です。材料の変更、人件費の削減、配送コストの抑制など、業績向上のための一手を決定します。

この決定に対して、目標となる原価を算出します。その原価を達成すれば、業績が向上するという仕組みです。実際に算出された原価と、目標との差を埋めることで業績の向上を図る方法もあるでしょう。

そして、業績が向上するまで決定した行動を続けます。この一連の業績向上に繋がる行動を決め、実行することこそが原価管理(原価計算という道具を使用して、業績が向上する仕組みを作り、行動するためのもの)となるのです。

【まとめ】

原価計算は財務会計および管理会計の土台となります。会社の経営状況を外部の利害関係者や行政当局に正しく提示し、業務改善や有効な意思決定を実現するためには、原価計算の活用が欠かせません。

正確な原価計算は、正確な決算書や税務申告にも必要不可欠です。近年ではクラウドツールの普及発展もあり、製造業以外にもさまざまな事業分野で原価計算の考え方を取り入れることが可能となってきました。

特に、多くの企業で多大な時間を浪費する事務部門の効率化などにおいては、原価計算の考え方を導入することにより、大きな成果に繋げることができると思います。

 

【参考書籍】

 


原価計算

 

以上が本日のテーマになります。ご覧頂き、ありがとうごさいました!

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